「まさか」「もう?」「いよいよ!」
冷房の効いた真夏のジムに、いつもとやや異なる感情が立ち込める。
背筋強化により、上半身から下半身への運動連携も上がったという日比野
5ヶ月停止していた世界のテニスツアーが、ついに再始動する――。
JTAシングルスランキング1位の日比野菜緒やダブルスランキング5位の加藤未唯らも、ニューヨークで開催されるウェスタン&サザンオープン、そしてツアー再開後初のグランドスラムとなる全米オープンに出場すべく、飛行機に飛び乗った。
その渡米の3日前、選手たちは最後の調整をすべくジムで黙々と汗を流す。
先行きが見えず、目標を失いかねない中で地道に積み上げてきた選手たちの努力の成果が、この部屋に展示されているようだった。
内転筋の強化に取り組む加藤。テニスのテイクバック時の動きと連動させたトレーナー氏考案トレーニングメニュー
課題だった背筋強化に取り組んできた日比野は「肩への負担が減りケガの防止にもなっている」と声にも充実感を滲ませる。
また、トレーナー氏が「良い仕上がりです」と名を挙げたのが、加藤未唯。「課題だった下半身強化ができた。体重が2kg増え、なおかつ動きは落ちてない」と太鼓判を押した。
スクワットに取り組む加藤
加藤本人も「これまで55kgしか上げられなかったスクワットとデッドリフトが、60kgに上がった」と、日に焼けた顔を綻ばし、目に見える成果に自信を深めている様子だ。
ツアー再開時期はギリギリまで確定せず慌ただしい渡米となったが、「私のテニスは、足が動けばそこまで不安はない」と明言。
この5ヶ月間で築き上げた心技体を、世界の舞台で解き放つ。
日比野菜緒(ひびの・なお)
愛知県出身25歳。スピンを掛けた安定のストロークを武器に、WTAツアーシングルス2度の優勝を誇る。読書や文章を書くことを好むインドア派な一面も。
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加藤未唯(かとう・みゆ)
京都市出身25歳。156cmと小柄ながら、突出した運動能力と高い技巧で単複で活躍する。登山やゴルフも嗜むアウトドア派。
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