ドロップショットをネット際に沈める。
サーブ&ボレーを華麗に決める。
以前から何でもできる選手だったが、プレーのバリエーションがさらに増えたのは明白。
「前より動けない分、頭使わないといけないので」
澤柳璃子は、そう言い快活に笑った。
ネットに出てスライスボレーを打ち、相手のロブを豪快にスマッシュで叩き込む澤柳
豊作の世代と呼ばれる1994年生まれの澤柳は、将来を有望視されたジュニアだった。だがプロ転向後4~5年経った頃から、同期たちに置いていかれたとの焦燥感に襲われる。
「もう無理なのかな」と自らに見切りをつけたのは2年前。23歳の時だった。
ところが、コーチ業に従事するうちに戦術眼に磨きが掛かり、そうなれば実戦で試したくもなる。一線を退いた後も時折試合に出場しては、結果も残してきた。
今回澤柳が参戦したのは、ファン向けイベントのエキシビションマッチ。WTA373位の荒川晴菜から、熱戦の末に勝利を掴んだ。
その澤柳に、これまでも何度か尋ねた質問を、また投げかけてしまう。
「本当に、現役復帰する気はないんですか?」……と。
「今の技術とメンタルでツアーを戦ったら、どんな感じだろうと思うことは前より増えました」
返ってきた答えは、これまでと少々トーンが異なっていた。
澤柳璃子(さわやなぎ・りこ)
1994年10月25日生まれ、北海道函館市出身。16歳時に、同期の加藤未唯と組んでITF1万ドル大会ダブルス優勝、17歳時に全日本選手権シングルスベスト8など、若くして実績をあげ注目を集める。2018年春に第一線を退き、現在はコーチ業と並行しスポーツ用品メーカーの試打会等でも活躍する。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】