「うーん…そんなに大きく変わったところはないんですけれど」と、日比野菜緒は小さく唸る。
7月1日に開幕する、クラウドファンディング大会『BEAT COVID-19 OPEN』に向けての取材時。ツアー中断間の取り組みや、「ファンへのアピール点」を尋ねた時の反応だ。
本人は謙遜しても、変化がない訳ではもちろんない。世界で勝利を掴むため、打つタイミングと展開力を早めることに留意してきたこの3ヶ月間。トレーニングでも、高速テニスの実現を目指しメニューを組んできた。
トレーナーがチューブを引っ張り、意図的にサイドへの動きを加速させている
スピードアップのために必要なのは、実は「止まる技術」だと日比野のトレーナーの横山正吾氏は言う。
ブレーキに自信がないと、自ずと走る速度を緩めてしまう。そこで、チューブを引っ張り通常より加速がついた状態から、止まる練習を繰り返してきた。
ストロークの動きを意識しながらのストップ&ゴートレーニング(撮影:横山正吾)
さらにその感覚を身体に刻んだ状態で、メディシンボールを用いたトレーニングに移行。実際のプレーにより近い動きの中で、フットワークの向上を測っている。
JTAランキング1位の日比野は、今大会参戦選手の中でも最高位。
その重圧を受け止めつつ、ファンに見て欲しいのは「どんどん前に出る展開力」。
そして目指すは、「出るからには優勝」だ。
日比野菜緒(ひびの・なお)
愛知県出身、25歳。最高世界ランキング単56位、複43位。単複それぞれでツアー2勝を誇る。実家で犬3匹を飼うドッグラバー。新顔のヨークシャテリアはツアー優勝のご褒美だとか。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】