2度目となる世界戦を目指すWBAフェザー級1位・大沢宏晋の取材中。サンドバッグ打ちを見ているといてもたってもいられなくなった。
この力強さを言葉で伝えるには、自分で体験せねば――。そう思いミットを持たせてもらった。
「得意パンチは左です」と話した大沢。左利きでありながら、利き腕を前に出した右構えを取るのが特徴だ。
確かに、左のジャブはスピードとキレがあり、ミットからでも重い衝撃を感じた。
しかし、それ以上に私が驚かされたのは右のストレートだ。
構えたところから瞬時に放たれるパンチは、出どころがわかりづらい。
いわゆるノーモーションだ。
通常、右構えの選手はパンチを打つ時に、強く打とうして体に力みが出てしまう。その一瞬の隙で打つタイミングがわかる。
しかし大沢の場合、利き腕が左のため、右を打つ時の力みを感じなかった。
ジャブのようなタイミングで右が放たれるので、ミットで受けるのも難しかったほどだ。
強打の左とノーモーションの右。役割分担ができた体のバランス感覚に加え、ここまでプロ45戦の豊富な経験が絶妙なスタイルを確立させている。
本人は「左をもっと完璧にして、負けないボクシングスタイルを作り出します」とさらに高みを目指す。
リングで対峙すれば同階級の世界王者たちでさえ、大沢のスタイルに驚くだろう。
大沢宏晋(おおさわ・ひろしげ)
大阪府大阪市出身。35歳。第42代OPBF東洋太平洋フェザー級王者。現在WBA世界フェザー級1位。介護士ボクサーとして二刀流で世界王者を目指す。
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