エゼキエウが、立てなくなった。トレーナーがピッチに入る。×印。ダメだ。
11月25日に行われた湘南戦の42分、若きブラジリアン・アタッカーが足を負傷。担架に乗ったままドレッシングルームへと消えた。
ケガの詳細はまだわからない。ただ、簡単に治る負傷ではないように見える。
前節とは11人先発を入れ替えた影響もあり、前半の広島は機能しなかった。唯一、エゼキエウを除いて。
湘南の厳しいプレスをモノともしないキープ力。ドリブルは止められない。美しいスルーパスで永井龍の決定機も導いた。
守備の場面でも献身的に走り、ボールも奪う。開幕した頃、自分の居場所を見つけられずに立ち尽くしていた姿とは、全くの別人だ。
どんなトレーニングでも真摯に取り組む生真面目さも、エゼキエウのストロングポイントだ(11月18日のトレーニング風景から)
成長の要因は、彼の生真面目さにある。
ブラジルの名門・ボタフォゴ(本田圭佑が活躍中)でレギュラーを張った自負は当然、持っている。しかしエゼキエウは日本で成功するために、そのプライドは投げ捨てた。
ほとんど経験のない守備を懸命に学び、ドリブルだけでなくコンビネーションにもチャレンジした。ありがちな日本サッカーに対する偏見もなく、提示される課題に取り組んだ。
「努力しても思い通りにならないこともあるけど、どういう状況になろうが、目の前にあるものに取り組むのみ」
大好きなワインもシーズン中は封印してサッカーに集中する姿は、かつて広島のエースとして君臨した佐藤寿人の哲学と同じ。だからこそ、今回のケガが悔しい。
途中出場の局面も決して少なくはないが、その難しさも実感しつつ、それでも前向きに取り組もうと意識している(11月18日のトレーニング後インタビュー)
ただ、一方で確信もしている。
エゼキエウならきっと、このケガを乗り越えてくれる、と。
クラブ史に残る選手として名前を刻んでくれる、と。
生真面目にひたすら努力する。その姿勢を見失わない限り。
エゼキエウ・サントス・ダ・シウヴァ
1998年3月9日生まれ。ブラジル出身。破壊力のあるドリブルと左右両足で正確に蹴ることのできるキックが持ち味。真面目な一方でお茶目なところもあり、190センチのレアンドロ・ペレイラに「彼にはヘディングを教えてやっている」と豪語。ちなみにエゼキエウは167センチである。
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