「今回の参加選手の中で、技術は一番高い」
そんな高い評価を、憧れの選手から得た15歳……それが、富田悠太だ。
去る12月11~12日に、三重県の鈴鹿市で“Yoshi’s Cup”と称されるジュニア大会が開催された。
大会の企画・運営者は、ヨシこと西岡良仁。
Yoshi's CUP
— YOSHIHITO NISHIOKA (@yoshihitotennis) December 12, 2021
準決勝 第2試合
大岐選手 5-7 富田選手
で富田選手の勝利です!#Yoshiscup pic.twitter.com/H203pFjsjS
「若手が世界を目指す機会を与えたい」との願いのもと、西岡自らが選んだ16歳以下の8選手による、完全招待制の“賞金大会”である。
中学3年生の富田は、参加者の中で最年少。170㎝と小柄だが、西岡も認める総合力の高さ、そして相手の裏をかく知略も武器だ。
その魅力的なテニスの原点にあるのは、似た体格で世界のトップと戦う西岡だという。
「パワー勝負では勝てないので、色々とやることを心がけている。いつも西岡さんのプレーを動画で見て勉強しています」
手前が富田。脚力と最後まで諦めぬガッツも武器
そんな“お手本”の西岡から、大会招待の連絡が届いた時は「びっくりした」。
同時に「結果を残してやろう」と奮起し、今大会では西岡が見守るなか年長者を次々撃破。
決勝では敗れたものの、豊富な手札を巧みに用いるクレバーなテニスで、見る者にもインパクトを残した。
取材での受け答えはプレー同様に知的で、優等生然とした富田。
ところがコーチの千頭政己氏によれば、「幼い頃はやんちゃ坊主」。
相手のプレーを見ながら「ここが苦手だな」と見抜くのが得手で、いたずらを仕掛けるように戦略を組み立てるのだという。
以前はその戦術が生かせずに、「あっさり負けることも多かった」。それがこの夏頃から、何かがカチリと噛み合あったかのように、連勝街道を走り始めたという。
富田本人曰く、躍進のカギとなったのは「トレーニング」。
「身体の使い方が上手くなり、パワーも生まれた」ことにより、頭で思い描いたイメージを身体で表現できるようになった。そんな成長の足跡も、どこか西岡と重なる。
決勝後のインタビューで、「結果は悔しいが、良い経験になった。前に入って打つことの重要性を認識した」と応じる姿は、冷静そのもの。
ところがコーチにカメラを向けられると、途端におどけたポーズを次々に取り始めた。
なるほど……と腑に落ちる。
この茶目っ気こそが、相手の裏をかくプレーの源泉にあるのだと。
富田悠太(とみた・ゆうた)
2006年10月31日生まれ。愛知県のチェリーTCを拠点とし腕を磨く。今年は全国選抜ジュニア15歳以下で優勝するなど、同世代では数々の日本タイトルを獲得。
西岡良仁(にしおか・よしひと)
1995年9月27日三重県生まれ。世界ランク48位到達、ATPツアー優勝の実績のみならず、”地域活性化プロジェクト”や今回の大会を企画・運営するなど、テニスの普及や若手育成への活動も行う。
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