【昨年末のアンケートでは多くの回答を頂き、ありがとうございます。その結果をもとにしたコラム企画。今回は「2021年に活躍しそうな私の推し選手」で錦織圭に続く票を集めた西岡良仁の実像に迫ります】
相手が術中にハマった――!
彼の試合を見ていると、そう感じる瞬間が多々ある。
近いところでは、2020年の全仏オープン1回戦、アレックス・オジェアリアシム戦がその一つ。
パワーで上回る相手が力でねじ伏せようとするも、徐々にリズムやバランスを崩し、やがては思考的にもパニックに陥っていく。
もちろんそれは偶然ではなく、チェスや将棋のように何手も先を読みながら、周到に張り巡らされた罠と戦術の帰結。
現に勝者は、オジェアリアシム戦後「こうしてこうすればポイントを取れるというのが、見えていた」と明言していた。
全仏OPのオジェアリアシム戦。緩いボールも巧みに用いる西岡のテニスに相手は自滅
そんな彼の知性と強靭なメンタリティは、見る者をも引き込んでいく。
「この状況下でも、色々なところに視野を拡げていて、そういうところもテニスにプラスになっていると思う」
「いつの間に、あんなサーブが打てるようになったのかと驚きました。トップ選手との試合からたくさん学んで身につけたと思います」
「壁があればあるほどメンタルが強く立ち向かう姿が印象深いので、このコロナ禍の中で試合が始まれば今まで以上に貪欲に勝利に向かって頑張るような気がします」
ヨッシーの愛称でファンからも親しまれる西岡は、170cmの身体で巨人たちに立ち向かうテニス界の“ダビデ”である。
西岡のテニスは、自身の履歴や思想をコートに描くようであり、振るうラケットは時に言葉以上に雄弁だ。
そのプレーが洋の東西を問わずファンの心に響くことは、彼の試合を海外で見る時、特に強く実感できる。
「去年、彼の試合を見て印象に残っていたから今年も見に来た」
「どこどこの大会で見てファンになったので、この大会にも応援に来た」
そのように、西岡目的で試合会場に足を運んだという地元ファンに、必ずと言って良いほど出会うからだ。
対戦相手が西岡の術中にハマっていくように、彼の試合を見る者もまた、その深みにハマっていく。
「西岡良仁選手の鬼ディフェンスなテニスが、攻撃力も加えて進化しそうな期待感があります。故障なくシーズンを乗り切れることを祈ってます」
「ランクが上の選手とも徐々に当たるようになって経験も積み、そろそろ飛躍の年かな」
高まる期待の声が、その事実を映している。
西岡良仁(にしおか・よしひと)
1995年9月27日三重県生まれ。テニスコーチの父の手ほどきを受け、兄と共に幼少期からラケットを握る。Youtubeチャンネルを開設し自ら情報発信するなど、オフコートでも才気煥発。
オジェアリアシム戦の詳報
【内田暁「それぞれのセンターコート」】