“ニューミックスダブルス”と呼ばれるテニス競技を、みなさん、ご存じだろうか?
これは、車いす使用選手と、車いすに座らぬ選手がチームを組んで行うダブルスのこと。
まだITF(国際テニス連盟)やJTA(日本テニス協会)の公式競技ではないが、エキシビション等で披露する機会は増えている。
車いすテニス選手は2バウンドまで許され、それが勝負の絶妙なアクセントに。見ている方も、戦略性と動きのパターンの多彩さに、脳が刺激されるようだ。
10月末に、千葉県柏市の吉田記念テニス研修センター(TTC)で開催された「WJPチャレンジテニスby BNPパリバ」は、「ダイバーシティ」をテーマに掲げた新しいテニスイベントである。
“WJP”の3文字は、Wheel chair(車いす)、Junior(ジュニア)、そしてProfessional(プロフェッショナル)の頭文字。それぞれの肩書を背負う選手たちが一堂に会し、2チームに分かれた団体戦として、熱い戦いを繰り広げた。
イベント発起人は、“最年長世界ランカー”の看板も背負う松井俊英。国枝慎吾をはじめ、多くの車いすテニス選手が拠点とするTTCで育った松井にとって、「車いすテニス選手と一緒に練習するのは普通のこと」だった。
昨年に続き2回目の開催となった今回は、さらに対戦カードのバリエーションも増えた。
ニューミックスダブルスでは、東京パラリンピック日本代表の荒井大輔が女子ジュニアと組み、49歳の”レジェンド”斎田悟司と15歳のペアと対戦するなど、あらゆる壁を取り払った対戦も実現。
荒井が広いコートカバーでラリーを組み立て、ジュニア選手がボレーを決めるなど、ニューミックスならではのポイント展開も多々見られた。
いろんな立場の人が同じコートに立ち、真剣勝負を繰り広げられるのは、テニスが有する美点だろう。
思えばテニスはその発展の歴史からして、男女がペアを組む混合ダブルスが起点にある。
ニューミックスダブルスは“New(新しい)”というよりも、むしろテニスの本質に根差した競技だ。
内田暁「それぞれのセンターコート」