「テニスは“個人競技だ”って言われるけれど、私にはどうもピンとこないの」
先の全豪オープン会見で、大坂なおみは、そう言い小さく首をかしげた。
会見室の机に置かれた銀杯は、つい先程つかみ取った女王の証明。
ただ、優勝セレモニーで「これはあなた達の物よ!」とファミリーボックスに向けトロフィーを掲げた彼女にとっては、“チームの結束力の証”だった。
大坂が言う通り、今やテニスはチーム戦だ。
選手は総監督兼オーナーであり、必要な人材を雇用する。
多くの選手が真っ先に雇用するのが、コーチ。次いで多いのがトレーナーだろう。またトレーナーにも、治療や予防、あるいはフィジカル強化など専門分野があり、複数名雇うケースも少なくない。トップ10クラスの選手にもなれば、3~5人のスタッフを帯同させるのが常だ。
ただ、一人の選手がこれだけの人員を雇うとなれば、相当な資本力が必要なことは想像に難くないだろう。
若手や新参者には、当然不可能。
その時に出番となるのが、各国のテニス協会だ。コーチやトレーナーを大会に派遣し、自国の選手たちをサポートするのも、協会の手腕の見せ所。こうなると、国別対抗戦の様相も呈してくる。
なお近年、女子プロツアーを運営するWTAは、選手のみならずコーチの会見の席も設けはじめた。
選手が活躍すれば、指導者の露出も増え、スターコーチも誕生する。
コーチはもはや裏方ではなく、テニス界の顔になりつつある。
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