7日、後楽園ホールでWBOアジアパシフィックスーパーウェルター級王者の井上岳志が、ミドル級日本13位のワチュク・ナァツと対戦した。
昨年、世界王座奪取には惜しくも届かなかったが、その後は3連続KOと波に乗っている。
対するワチュクは、日本人の母とナイジェリア人の父を持つボクサー。ここまで6勝(3KO)2分と無敗だ。
井上が序盤から持ち味であるフィジカルを活かした接近戦を仕掛けていたが、なかなかペースを掴めず、深い懐を持つワチュクにパンチが当たらなかった。
近距離では井上、長距離ではワチュクがペースを握る。中間距離では一進一退の攻防が続いた。
そんな中、井上が時折放つ右のストレートがワチュクにヒットして、徐々に井上がペースを握っていった。井上が右をヒットさせて見せ場を作り有効打を奪い、最終回では、お互いパンチを出し合って激しい打ち合いになった。
試合は判定までもつれこみ、井上が3-0(78-75、78-74、79-73)で勝利した。
世界ランキングを持つ井上だが、長距離が得意なワチュクに苦戦した試合だった。試合後には、「いい試合ができたとは言えない。練習して戻ってくる」と反省した。
苦しい展開でも勝利を手繰り寄せられたのは、改良中のスタイルが活きたからだ。
最近の井上は、得意な接近戦から長距離で戦い、ポイントをしっかり取れるスタイルに改良している。
サンドバックを打ち込む井上
9月9日に練習を取材した時も、サンドバッグを相手に見立てて右のストレートを打ち込んでいた。
見栄えがいい右ストレートは、明確にポイントを取るのに必要なパンチだ。今回の試合でも、その右がポイントに繋がった。
試合後のインタビューでは「まだまだ諦めてないし、世界チャンピオンになれるように頑張っていきます」と今後に向けて意気込みを語った。
中重量級の世界への壁は厚いが、井上の挑戦は続いていく。
井上岳志(いのうえ・たけし)
東京都足立区出身。30歳。第37代日本スーパーウェルター級王者、第35代OPBF東洋太平洋スーパーウェルター級王者。現WBOアジアパシフィック東太平洋スーパーウェルター級王者。ワールドスポーツボクシングジム所属。戦績は18戦16勝(10KO)1敗1分。海外ボクシングをYouTubeで研究している。
関連記事
・ムンギア戦からみせた成長
・師と共に作り上げる理想のスタイル
【木村悠「チャンピオンの視点」】