大阪に再起を目指すボクサーがいる。久田哲也(ひさだ・てつや)だ。
久田は昨年10月に大阪でWBA世界ライトフライ級王者・京口紘人と対戦し、判定で惜敗した。
デビューから苦節16年、プロ46戦目での世界初挑戦は、平成以降最も遅い記録だ。当時すでに34歳。「引退」の二文字も頭によぎった。しかし熟考の末、トレーニングを再開したという。
自分には何が足りなかったのか。久田は京口戦で解説者も務めた三階級王者・長谷川穂積氏にアドバイスを求めた。
「キャリアを活かしたボクシングに切り替えた方がいい」
長谷川氏の指摘はスタイルの変更を勧めるものだった。通常、ベテランボクサーがそれを簡単に実行に移すのは難しい。しかし久田はがむしゃらに前に出てプレッシャーをかける形から、ジャブをつき距離をとって組み立てるスタイルに変更したという。
相手との距離をとる練習をする久田
「新しいことに取り組めて毎日が楽しい。年齢など関係なく、成長し続けることはできる」と笑ってみせる。
31歳でWBC世界ライトフライ級王者に就いた筆者も、山中慎介氏や西岡利晃氏ら帝拳ジムの先輩王者からアドバイスをもらい、活かせたからこそ遅咲きの世界王者になることができた。ベテランでも柔軟にアドバイスを聞き入れることで伸びしろはまだまだあるはずだ。
現在、WBC世界1位にランクインする久田。WBC世界ライトフライ級王者・拳四朗との日本人世界戦もありえるだろう。
苦労人の青春は、まだまだ終わらない。
久田哲也(ひさだ・てつや)
大阪府堺市。35歳。第40代日本ライトフライ級王者。ハラダボクシングジム所属。戦績は46戦34勝(20KO)10敗2分。 17LIVE (イチナナ)でライブ配信もしている。オフィシャルブログのタイトルは「ぜったい世界チャンピオン」。
【木村悠「チャンピオンの視点」】