17日、将来が期待される、無敗のホープ対決に注目が集まった。
日本ユース・スーパーライト級王者で高いKO率から「和製マイク・タイソン」と呼ばれる佐々木尽と、2階級制覇狙いの日本ユース・ライト級王者の湯場海樹の一戦だ。
佐々木の持ち味はパンチ力。タイソンのように一撃で試合を終わらせるパワーでこれまで、10戦全勝9KOのKO率を誇る。
対する湯場はアマチュアでインターハイ2位の実績を持つテクニシャンタイプ。父が日本王座5階級制覇を達成したサラブレッドだ。
試合は初回から大きく動いた。
ガードを固めてタイソンのように前に出ていく佐々木に対して、サウスポーの湯場は距離を取りながらジャブをついて迎え撃つ。
左右に大きなパンチを振るう佐々木が、攻勢をアピールして試合を優位に進めているように見えた。
しかし1R残り30秒過ぎ、湯場の左のカウンターがヒットしダウン。佐々木はすかさず立ち上がったが、ポイントを取られてしまった。
続く2Rでも、佐々木が取り返そうと前に出たタイミングで再び左をもらってダウン。
今回のパンチはダメージも深く、足元もおぼつかない。湯場もチャンスとみてコーナーに追い詰め、パンチをまとめて行った。
佐々木は絶体絶命――。試合を見るほとんどの人がそう思った次の瞬間、佐々木の右からの返しの左フックが湯場の顔面を捉えダウンを奪う。
なんとか立ち上がった湯場だが、フラついたのを見てレフリーが試合をストップした。
佐々木が2度のダウンを跳ね返し、まるで漫画のような大逆転劇で勝利を掴んだ。KO寸前に追い込まれながらの、一発での逆転はあまり記憶にない。
フィニッシュは、湯場がラッシュを掛け、ガードが下がったところにベストタイミングで入った左だ。
佐々木はコンパクトな左の強打がピカイチだ。本人も「左は完璧に世界レベル。当たれば絶対倒せる」と自信を持っている。
以前の取材でミット打ちを受けたが、右も左も強く、持っていた手が吹き飛ばされるほど。フィニッシュは左が多いが、右でも強打が出来るのがポイントだ。
今回の試合でも序盤は右の大振りで、湯場の注意を絞らせなかった。しかも左のフィニッシュブローはタイミングが早く、相手からすれば来ると思ったら当たっているような感覚だろう。
佐々木はダウンでダメージを抱えながらも、相手をよく見て、一発で試合を決めて見せた。
次戦は、10月19日後楽園ホールで日本スーパーライト級1位の平岡アンディと対戦する。海外のトップランク社と契約している実力派の世界ランカーだ。
佐々木が「世界への通過点の戦い。KOで勝ちたい」と話す通り、勝てば一気に世界への道も開けるだろう。
観客を魅了するパンチを持つ大器は、まだ19歳と伸び代は未知数。中量級のスーパースターへと一気に駆け上がってほしい。
佐々木尽(ささき・じん)
東京都八王子市出身、19歳、八王子中屋ボクシングジム所属、第2代日本スーパーライト級ユース王者。戦績は10戦11勝(10KO)。一撃で試合を決めるスタイルからジャパニーズタイソンの異名を持つ。
関連記事
現役高校生のジャパニーズタイソン佐々木尽 目にも止まらぬ高速シャドーに注目
なぜ、19歳の新鋭は抜擢されたのか?世界王者の中でも物怖じしないKOメーカー・佐々木尽
【#木村にパンチ】ジャパニーズタイソン佐々木尽の実力は…?元世界王者の木村が体感!
【木村悠「チャンピオンの視点」】※トップ写真は©FUKUDA NAOKI