2月に行われた、コロナ禍における医療関係者支援を目的としたボクシングチャリティーイベント「LEGEND」。
井上尚弥や比嘉大吾、京口紘人など実績がある新旧世界チャンピオン、アマチュアの五輪出場選手が集まる中で、19歳の佐々木尽に目を奪われた。
そうそうたるメンバーの中で、ユース王者の青年が呼ばれたのは大抜擢と言えた。何よりも、その舞台に物怖じしない度胸が光っていた。
「スーパーライト級にKOを量産しているすごい奴がいる」と佐々木の噂はここ1年よく聞かされていた。
最近は、アマチュアで実績がある選手がプロ入りして人気を集めるケースが多く、佐々木のようにアマチュア経験なしの叩き上げでここまで注目されるのは珍しい。
ここまで10戦のうち4試合が1RKO勝利。一撃で相手を仕留める豪快なボクシングは魅力十分だ。
「LEGEND」では、東京五輪代表に内定している岡澤セオンと対戦。アウトボクシングに苦しめられる場面もあった。
「(短期戦の)アマチュアを極めていた選手はうまかった」と相手の実力を認める一方、急なオファーで「コンディションを整えられなかった」と最近味わえなかった悔しさをにじませる。
中学時代、格闘技好きの父に勧められてボクシングを始めた時も悔しい気持ちからのスタートだった。
「喧嘩の延長で簡単に勝てる」と思った初めてのスパーリング大会で敗戦。
負けず嫌いな心に火がつき、練習への取り組みも変わった。それから1日に3時間以上のジムワークをほぼ毎日こなしている。
八王子中屋ボクシングジムで、荒川仁人や淵上誠ら世界挑戦の経験がある選手を育てた先代会長・中屋廣隆氏は「度胸もあるし、何より素直。誰よりも努力しているし、心ができている」と絶賛する。
「デカい会場でできたのが経験になった」。今回トップアマと拳を合わせた経験はもちろん、何よりもそこで得られた感情が彼を一回り成長させるはずだ。
まだ試合数も実績も少ないが、今後人気を集める選手になるだろう。ぜひ注目してもらいたい。
佐々木尽(ささき・じん)
東京都八王子市出身、19歳、八王子中屋ボクシングジム所属、第2代日本スーパーライト級ユース王者。戦績は10戦10勝(9KO)。一撃で試合を決めるスタイルからジャパニーズタイソンの異名を持つ。
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