「全て出し切って負けた。だからこそ悔しいし、ショックもありました」
世界3階級王者・田中恒成は昨年末に行われた、同4階級王者・井岡一翔とのスーパーフライ級タイトルマッチを振り返る。
プロ初の敗戦が、田中に与えた影響は大きい。
「ぶつかった時やパンチで相手の体がぶれなかった。自分のパンチを耐えられてしまう。体の強さを感じました」
自分の打撃をしても通じない衝撃。田中のもといたフライ級と、スーパーフライ級は1.3kg制限体重が違う。しかしその数字以上の差を田中は感じていた。
「自分にとって価値がある試合だった。変わらないといけない」
体の土台から作り直すために新たなトレーニングを取り入れ、下半身のベースの強化に取り組んでいるという。
チューブで圧力をかけることで下半身の土台が安定する。
上位の階級で戦い抜くためには、相手に押し負けず、ぶつかり合っても力を削られない体の強さとバランスが大切だ。
今までやってこなかったトレーニングも取り入れて、3階級王者は一からの体作りをスタートした。
「練習する中で、新しいイメージが出てきて変化を感じています」
敗戦から学び、また新しい田中恒成に生まれ変わって欲しい。
田中恒成(たなか・こうせい)
岐阜県多治見市出身、26歳、SOUL BOX畑中ボクシングジム所属、元WBO世界ミニマム級王者、元WBO世界ライトフライ級王者、元WBO世界フライ級スーパー王者。戦績は16戦15勝(9KO)1敗。井上尚弥と並ぶ日本最速タイ記録となるプロ8戦目での世界2階級制覇を成し遂げた。
【木村悠「チャンピオンの視点」】トップ画像=©FUKUDA NAOKI