何気ないシャドー(トップ動画)に、原点が垣間見える。入江聖奈のボクシング人生は、親に隠れ、鏡の向こうに相手を思い描き、一人でパンチを繰り返した少女時代に始まった。
彼女がボクサーに憧れたきっかけは、ボクシング漫画『がんばれ元気』を読んだこと。『あしたのジョー』に並ぶ70年代の名作だ。初めは両親にも言い出せず、漫画の主人公を真似てパンチの練習をしていた。
だが、ふつふつと沸き起こる情熱をそれだけでは抑えきれなかった。
母の反対を説き伏せ小学2年時に山陰地方の名門・シュガーナックルボクシングジムで本格的な練習をスタート。「今では母が一番応援してくれます」と初志を貫き通して周りを認めさせた。
「親に言い出せず一人で練習していた時期があったから、始めてからは思いっきりボクシングにのめり込めました」
コロナ禍でジムワークができなかった時は原点に戻ってシャドーボクシングに以前より多くの時間を割いた。「五輪は延期になりましたが、1年余分に練習ができると思ってます」と前を向く。
「今は東京五輪に向けて全力を尽くしています。その先は考えていません」集大成での活躍が楽しみだ。
入江聖奈(いりえ・せな)
鳥取県米子市出身、20歳、女子フェザー級(57kg)。高校1年時に全日本選手権(ジュニア)フライ級で優勝、2018年の世界ユース選手権で銅メダル獲得、2019年の世界選手権ではベスト8。日本体育大学では柔道の阿部詩と同級生。
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