昨年の大晦日、井岡一翔戦でのプロ初黒星を受け、「全てを変えた」という元3階級王者・田中恒成。天性のスピードを活かした攻撃的なボクシングからガード重視にスタイルチェンジしたのは以前に記したとおりだ。
しかし、それまでのストロングポイントだった攻撃はどうなのか。
筆者は現役時代には田中とスパーリング経験があり、引退後にも取材機会に恵まれている。実際にどう変わったのか、リングで向かい合いパンチを打ってもらった。
まず、間合いやタイミングなどに以前との大きな違いを感じた。
「速く、強く」を重視するスタイルから、サイドへの動きやフェイントなど、以前の田中にはなかった動きがみられた。元から持つ迫力に加え、短期間で身につけたとは思えないほどの技術。まるで別人と言っても過言ではない。
ボクシングではどんなに速いパンチでも、来るタイミングがわかると簡単には当たらないが、モーションが悟られないパンチは遅くても当たる。
そのような相手に最も嫌がられるパンチが、新たに加えられた武器だ。
プロ初となる敗戦から8か月(取材時)。全く別のスタイルを高いレベルで身につけていることに驚くばかりだ。
「どこにいても自分のスタイルを出せる選手になりたい。アメリカで認められたいし、海外進出も考えている」
虎視眈々と野望を語る恒成。強豪がひしめくスーパーフライ級で復活の時を待つ。
田中恒成(たなか・こうせい)
岐阜県多治見市出身、26歳、SOUL BOX畑中ボクシングジム所属、元WBO世界ミニマム級王者、元WBO世界ライトフライ級王者、元WBO世界フライ級スーパー王者。戦績は16戦15勝(9KO)1敗。井上尚弥と並ぶ日本最速タイ記録となるプロ8戦目での世界2階級制覇を成し遂げた。
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