「振り返るとあっという間の4年間でした」
IBF世界スーパーフェザー級3位の尾川堅一は、波乱万丈のキャリアをそう振り返る。
尾川は2017年にアメリカで同級王座決定戦に出場し、テビン・ファーマー(米国)に2-1で勝利。
しかし、試合後の禁止薬物検査で陽性反応が発覚し、王座を剥奪された。そこから4年経ち、再び世界挑戦の舞台に辿り着いた。
対戦相手の王者シャフカッツ・ラヒモフ(タジキスタン)は好戦的なサウスポー。試合が決まる前から意識していた選手のようだ。
「実は前回の挑戦者決定戦が決まった時に、(対戦相手として)ラヒモフの名前も上がっていました。その時に彼の試合のビデオを見て、戦ったら面白いと思ったし、いつか戦うような予感がした選手。この対戦が決まって運命を感じましたね」
通常、右構えの選手にとってサウスポーは相手の右手が前に出ているためジャブが当たりにくい。さらに絶対数の少ないサウスポーは、右構えとやり慣れている一方、こちらは経験値を積みづらく不利になりやすい。
しかし、キャリアの約30戦のうち10戦近くはサウスポーを相手にしてきた尾川は「サウスポーは得意で組み立てやすい」と自信を見せる。
2017年にサウスポーの那須川天心とエキシビション(動画1:30~)した際の映像を見ても、多彩な左ジャブで間合いを測ったりけん制するなどして、主導権を完全に握っている。
さらに「普段の相手は自分を警戒して下がるボクシングが多いのですが、ラヒモフは好戦的なので、噛み合うと思います」と、相手の積極性を利用し、この階級で抜群のパンチ力を発揮できると分析する。
「チャンスをもらえる選手は一握り。世界のベルトをもう一度掴み取ります」
相手の負傷で当初8月の試合は10月に延期となったが、目指すところは変わらない。
「4年前に失われた時間を取り戻しにいく」と誓った尾川。巡ってきたチャンスを掴み取って欲しい。
尾川堅一(おがわ・けんいち)
愛知県豊橋市出身、33歳、帝拳ジム所属、第46代日本スーパーフェザー級王者。戦績は28戦25勝(18KO)1敗1分1無効試合。2017年12月にラスベガスで行われたIBF世界同級王座決定戦に勝利するも、禁止薬物に陽性反応があったとして試合は無効、1年間のライセンス停止処分を受けた。
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