ふと見ると、彼の髪の毛がまた、明るくなっていた。
「どうしたの、その髪の毛は?」
そんな質問に東俊希は、笑顔で「勢いっす、勢い」。
9月10日、対横浜FM戦前日のミックスゾーンでの出来事だ。
確かに今、東のプレーは凄まじい。
大分戦では1アシストを含む全4得点に絡み、神戸戦ではFKゴールをゲット。さらに、生まれて初めてのストッパーもそつなくこなした。
「このままの勢いで、点をとるだけっす」。
プレーも言葉も、頼もしい。
決して饒舌ではないが、話すことは好き。かつてコンビニで偶然会った時、「最近、僕の取材がないっすね。ぜひ、お願いします」と訴えた。選手からこんなことを言われたのは初めて。彼の率直さには、正直驚いた。
また、7月22日に配信した記事(東俊希に何かを気づかせた、佐々木翔の言葉)を彼自身も読み、翌日に言ってきた言葉も印象的だ。
「ショウくんとの話は覚えているんですけど、言葉が正確にこうだったかどうか……」
佐々木に「東くんが気にしていた」と言うと「僕も記事は読んだけど、ほぼそういうことでしたよ」と、後輩の純粋さに微笑んだ。
率直さはFWからCBまで様々なポジションで起用されても受け入れる素直さにつながり、純粋さはサッカーと真剣に向き合うひたむきさに直結。「活躍の鍵は人間性」と多くの指導者が語る原則は、東の急成長ぶりが証明している。
シーズン前、東俊希は「15得点に関与する」という目標を掲げた。「その目標は今も、意識しています」と彼は言う。
9月11日の横浜FM戦でも、強烈な左足シュートでドウグラス・ヴィエイラの得点を導いた。これで関与したゴールは9得点、うち6得点がここ3試合。
若者覚醒、その直前である。
東俊希(ひがししゅんき)
2000年7月28日生まれ。愛媛県出身。2018年、広島ユース3年の時に天皇杯・名古屋戦で公式戦デビュー。2019年、ACLメルボルン・ビクトリー戦でプロ初得点。またAFC U-19選手権(2018年)の準々決勝・対インドネシア戦で35mシュートを決め、日本のU-20ワールドカップ出場権獲得に大きく貢献した。荒木隼人や森島司と仲がよく、先輩たちの車に乗っては自分の好きな音楽を勝手にかけている。
・若き東俊希の、太るための努力
・東の初得点に見る、成長の軌跡
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】