サンフレッチェの選手が選ぶテクニシャン第1位。
昨年、広島のケーブルテレビ局が行ったアンケートで、圧倒的な支持を集めたのが、36歳のMF柴﨑晃誠だった。
ボール回しで浅野雄也(左)と共にオニ役となるオレンジのビブスを手にした柴﨑晃誠。自分より10歳以上も年下の選手たちと共に笑顔で汗を流す(8月20日撮影)
「俺が年長者だから、気を遣ってくれたんですよ」とベテランは苦笑い。だが、林卓人は「ギリギリの判断力が凄い」。藤井智也は「晃誠さんがボールを持つと思いきり走れる。パスが出てくるから」。そして青山敏弘は一言「天才」。選ばれて当然という仲間たちの反応だった。
8月21日の対川崎F戦で最も輝いた選手もまた、ケガから復帰したばかりの柴﨑だった。
広島は前半、川崎Fを激しいプレッシングで圧倒したが、その中心には彼がいた。プレスから奪ったボールを引き取り、即時奪回を狙う川崎Fの圧力をものともしない。
27分、右サイドでボールを受け、一瞬のボールさばきで登里のマークを外し、中央で待つ柏好文に精密機械のようなクロス。王者を慌てさせた先制点は、柴﨑の技術と戦術眼から生まれた。「晃誠のスペースの見つけ方とサポートに入るタイミングは、若い選手たちも学んでほしい」と城福浩監督も称賛する。
J1通算300試合出場を達成した柏好文を「あいつはタフガイ。(国士舘大の)後輩ではあるけれど、アタマがあがらない。俺よりも上の選手です」と語り、「このコメントは使ってくださいよ」と念を押した。
その優しい先輩のパスからゴールを決めた柏は「ケガあけの試合ですぐに結果を残すなんて、晃誠さんらしい。一緒に出て、活躍して、お互いを高め合って広島の勝利のためにやっていきたい」と絶賛する。
負傷離脱者を多数抱え、チーム構成に苦しむ広島。だがチームナンバーワンのテクニシャン・柴﨑晃誠が戻ってきたことは、何よりの“戦力補強”になる。
柴﨑晃誠(しばさき・こうせい)
1984年8月26日生まれ。長崎県出身。国見高校時代は3年連続で全国高校サッカー選手権大会決勝に出場し、2度の優勝。2年時には大会得点王も獲得している。2003年、国士舘大に進学。今も衰えない運動量は、国見高・国士舘大で経験した猛練習の賜物だと柴﨑本人は言う。2007年、東京Vに加入。以降、川崎F・徳島を経て、2014年から広島でプレー。2015年、ボランチからシャドーにコンバートされたことで彼の才能が爆発。6得点7アシストを記録し、優勝に大きく貢献した。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】