「MF松本泰志選手の胸板が圧倒的に分厚くなりましたが、具体的なトレーニング方法が聞きたいです」
先日募集した、選手に関する「あなたが見たこと、聞いたこと」のアンケートでこんな質問を頂いた。
2019年、広島でスタメンをとった頃の体重は69キロ。現在は70キロだから、ほぼ変わらない。だが、彼の姿を見た誰もが「大きくなった」と感じる。必要のない肉がそぎ落とされ、筋肉の鎧を身に纏い始めた証拠だろう。
「いやあ、特別なことはやってないですよ。フィジカルコーチや知り合いの方に聞いて、週2回くらい筋肉トレーニングして、食べて寝る。それだけです」
松本泰志は、首を振りながら笑った。だが、筋肉は嘘をつかない。シャツの上から見ても、袖口から見える上腕二頭筋を見ても、華奢だったデビュー当時を知っている者からすれば、別次元だ。
2019年の後半、松本は青山敏弘が負傷から復帰したこともあり、ポジションを失った。それでも「試合に出られなくても、やるべきことはある」と考えて筋肉トレーニングの量を増やし、それを継続。その姿はプロ2年目(2005年)の青山が左膝前十字靱帯断裂による長期離脱の間に鋼の身体を創り上げた過程とよく似ている。
「確かに、上腕部や肩周りは太くなったかもしれない。守備の時に相手を腕で抑えたり、球際で相手を弾く力は間違いなく向上したと思います。簡単に倒れなくなりましたね」
8月7日のトレーニング後、沢田謙太郎ヘッドコーチと言葉をかわす。ボールを蹴ることも大切だが、指導者との会話の中から成長へのヒントをつかむことも若者には重要
一方、プライベートでも仲がいい森島司については「あの人は、筋トレなんてやらないです」とバッサリ。もちろん、必要最低限のレベルはやっているはずだが、松本の目からは「やっていない」レベルだ。
「それでもあの人、体幹は強いんですよね。まあ、モリシ(森島)くんはただの天才なので」
城福浩監督から求められる守備の強度は「当然、継続して意識していく」と語った上で「得点に関わるプレーを」と意気込む。8月22日に23歳の誕生日を迎えた松本泰志は、鍛えた身体と持ち前の技術を武器にポジション奪取を誓った。
松本泰志(まつもと・たいし)
1998年8月22日生まれ。埼玉県出身。昌平高から2017年、広島に加入。2019年にはスタメンが続き、日本代表にも選出。2020年には福岡、2021年からはC大阪に期限付き移籍していたが、7月に広島復帰。8月9日の対福岡戦で復帰後初出場を果たしたが、試合に集中するあまり、試合後の福岡サポーターへの挨拶を失念。「着替えた時に気づいた。本当に申し訳ありません」と反省しきりだった。
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