まだ、本調子ではない。
7月3日の対鳥栖戦で足を負傷後、約1ヶ月ぶりの出場となった福岡戦(8月9日)での浅野雄也はゴールもボールを運ぶ力も見せられなかった。
8月2日、愛媛とのトレーニングマッチで実戦に復帰。2本目21分、茶島雄介の縦パスで裏をとり、見事なゴールを流し込んだ。健在ぶりを示したが、ここからなかなか状態があがってこない
「感覚的にまだ、難しい感じがある」
8月17日の練習後、彼にしては珍しい弱音が飛び出した。城福浩監督も「自身の武器を発揮するための判断が、冷静にできていない」と彼がまだ本来の状態ではないと評価する。
愛媛FC戦、カウンターの場面。浅野雄也がドリブルで持ち込んだが、ここでパスを選択した。本来の彼であれば、勢いにのってシュートまでいけたシーンではある
ただ、浅野の力には多くのOBが期待している。森﨑浩司アンバサダーは「左足で巻いて打つシュートは上手い」と称賛。かつての広島のエース・久保竜彦氏も「他とは違う爆発的なシュート力を持っている」と想いを語る。
彼ら二人とも、そして森﨑和幸CRMもその可能性を認めているのが、浅野の1トップでのプレー。この形は昨年12月16日の対柏戦でも試され、得点こそ奪えなかったが確かな可能性は見えた。
私生活でも仲のいい森島司(左)とのパス交換からシュート。居残りで何本もシュートを打ち、自分の感覚を取り戻そうと試行錯誤の日々(8月7日撮影)
「(得点力不足打破のために)最も得点に貪欲な浅野を最前線に置いていい」と森﨑アンバサダーは言う。
城福監督は、まず浅野の状態を戻すことが先決とみて、8月15日の紅白戦でもシャドーで起用。だが、今季は2トップでも起用してきたわけで、彼のFW起用にネガティブではあるまい。
「試合に出られるなら、どこでもやります」
若者は意欲を剝き出しにする。
「1トップなら攻撃のスイッチを自分が入れたい。全員、俺についてこいって感覚で」
8月7日のトレーニング後、林卓人(背中)と談笑する浅野雄也。かつて林は雄也の兄・拓磨が広島にいた頃、GK目線でのストライカー論を語り、拓磨のブレイクを手助けしたことがある
高さ(170㎝)が足りないとか、ポストプレーができるのかとか、そういう声も聞こえてくる。しかし、彼より高さがなくポストプレーヤーでもなかった佐藤寿人が1トップで大成功した実績もある。
「周りとの連携がうまくいけば、あとはセンスですから」
そう言って笑う浅野雄也のポジティブな魂が、期待を増幅させる。
浅野雄也(あさの・ゆうや)
1997年2月17日生まれ。三重県出身。日本代表FW浅野拓磨(ボーフム)は実兄。大阪体育大から2019年、水戸に加入。2020年から広島でプレーし、主としてシャドーでプレー。昨年は32試合出場5得点、今季はここまで22試合出場4得点。兄・拓磨とは幼い頃からライバルであり、遊び友達のような感覚で、YouTubeで音楽を流しながら一緒に踊ったりしていた。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】