気のせいか、身体から吐き出す空気感が変わってきたように見える。
10月7日の紅白戦。左サイドから一気に中へと飛びこみ、東俊希はスルーパスを受けてシュートを放った。枠外ではあるが強烈。
ワイドの選手がゴール前に走るのは「狙っている形」(城福浩監督)ではあるが、その形をなぞるだけか、勢いをもって表現するかで大きく違う。今の東は間違いなく後者だ。
鋭い飛びこみは東のストロング。ただ、この時のシュートは苦手の右足だった
自信の源泉はJ1初得点を記録した3日の鳥栖戦。ただ、この試合では力んで速過ぎるクロスを入れてしまうミスもあった。
ただ、「失敗は次に繋げたい」と若者は言う。
「どんどんトライしろ」というFW永井龍の言葉を受け止め、紅白戦では絶妙のスピードでクロスを通し永井のゴールを演出。日毎に成長する若者の姿は目を見張る。
その急成長ぶりの象徴は「守備ですね」と指揮官は指摘する。
「プレー強度が高いし、突破も許さない。彼の守備には信頼を置いています」(城福監督)
守備の評価が高いが、特長は攻撃。クロスに磨きをかけたい
広島ユース時代から攻撃を特長とするアタッカーだが、いつの間にか守備でも信頼を勝ち取った。ここまで全試合出場という実績の裏側には、守備という確固たる基礎が存在していたのだ。
鳥栖戦前、「最近、取材を受けていない」と口を尖らせていた。なのでこの日の練習後、目の前を通り過ぎようとした東に「ちょっと話を聞かせて」と声をかける。すると「えっ、試合後に会見があったから、もうないのかと」。いやいや、もっと取材させてください。広島の希望なのだから。
東俊希(ひがし・しゅんき)
2000年7月28日生まれ。愛媛県出身。MF。広島ユース3年の時、天皇杯名古屋戦で公式戦デビュー。その年の高円宮杯決勝では先制点をアシストするなどの違いを見せてユース年代日本一に。昨年、ACLや天皇杯では得点できていたが、リーグ戦ではアシストのみ。プロ2年目の今季、10月3日の鳥栖戦で待望のJ1初得点を決めた。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】