9月21日、快晴の広島広域公園第一球技場で、城福浩監督は童顔の若者と言葉をかわしていた。
「ポジションについてはどう考えてる?」
「監督の想いも聞けて、話ができてよかったです」と鮎川は言う
監督の言葉に鮎川峻は素直に「FWがやりたいです」。
「わかった。ただ試合に出る可能性をあげるためには、複数ポジションでのプレーも考えた方がいいぞ」
指揮官の言葉に、最初は素直になれなかった。FWで結果を出してたからこそ、プロになれたという自負はある。
でも、やっぱり試合には出たい。複数の位置がこなせればメンバー入りはもちろん、5人交代制の今季であれば試合に出る確率も高まる。
何よりも、同期のMF・土肥航大が23日の大分戦でJリーグデビューを果たしたことが刺激となった。
1本1本、魂を込めてシュートを打つ。それが何本も、何十本も、毎日続く
土肥も鮎川同様に、ちょっと前までは紅白戦にも参加できなかった。「航大が出れるのなら、頑張ればチャンスがくる」。そんな希望が、鮎川の心を支配した。
先発予定だったルヴァンカップでは、対戦相手の鳥栖側にクラスターが発生したことで中止。ケガにも泣いた。正直、ついていない。
それでも鮎川は自身を𠮟咤し、青山敏弘にも様々な話を聞いて、言葉を自分に突き付ける。毎日最後まで残って、誰よりも激しく熱く、練習を続ける。
「成長のために少しでも試合に出ることを考えよう」
監督の言葉を胸に抱き、若者は悩みながらも前に進む。
鮎川峻(あゆかわ・しゅん)
2001年9月15日生まれ。愛知県出身。2017年に広島ユース加入。2018年、高円宮杯ファイナルで先制点を叩き込み、広島ユース3度目(前身大会から通算5度目)の優勝に大きく貢献した。今季からサンフレッチェのトップチームに昇格。U-19日本代表にも定期的に招集されている。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】