「おはようございます」
10月13日の吉田サッカー公園で聞いた、懐かしい声。
「あれっ?」
2度・3度と見返した。
何の予告もなく、藤井智也が広島に再合流していた。
約1ヶ月半ぶりに広島に戻ってきた若者。全く違和感なく、コーチ陣とも言葉をかわしていた
8月29日の対仙台戦出場後、強化指定選手の彼は半年ぶりに立命館大学に戻った。9月14日から始まった関西大学リーグ1部後期に出場し、卒論制作にも力を入れるためだ。
リーグ戦では4試合に出場し1得点2アシストと期待に応えた。だが広島の試合をDAZNで見るにつけ、トップレベルのサッカーへの情熱が抑えられない。「監督とチームメイトが自分の想いを理解してくれた」(藤井)こともあり、再び広島でプレーする機会を得ることになる。
大学復帰までの藤井は、悩みに悩んでいた。
Jリーグ再開後、1試合の先発を含む全試合に出場。しかし残した数字は0得点0アシスト。彼の強みである猛烈なスピードを警戒され、突破もままならなくなった。
約1キロはある縄を使った縄跳びで、肩甲骨周りをはじめとする上半身の筋肉を鍛える。池田誠剛フィジカルコーチのメニューに早速、藤井は挑戦
「僕は実力もないのに、同情で使ってもらっているんですか」
迫井深也コーチに素直過ぎる想いをぶつけ、叱責されたこともある。
「あの時は確かに気持ちが落ちていた。でも大学に戻る最後の仙台戦でのプレーで、自分なりに手応えを掴めたことがよかったのかも。今は、サッカーを楽しめています」
ハイネルや柏好文がケガを抱えワイドの選手層が薄くなった今、藤井にかかる期待は大きい。
「試合に出たら、どういう選手に対しても仕掛けたい」
風の子・藤井智也、笑顔の決意である。
藤井智也(ふじい・ともや)
1998年12月4日生まれ。岐阜県出身。MF。高校までは全くの無名。立命館大学入学後、圧倒的なスピードを武器に台頭。大学3年時の2019年、関西大学リーグで22試合14アシスト。横浜FMとの天皇杯でも活躍して、一気に注目を集めた。既に来季からの広島加入が決定、今季は強化指定選手としてここまで11試合に出場。
【中野和也の熱闘サンフレッチェ日誌】