威風堂々のヘディング。誰1人、すがることすらできない高さ。
圧倒的とも言えるゴールを決めても、野上結貴はニコリともしなかった。2月10日、指宿キャンプ中に行われた対磐田戦での出来事だ。
指宿キャンプの当初、野上は足に違和感を抱え別メニュー調整が続いていた。全体練習に復帰したのは6日の松本戦後で、その後の練習でも磐田戦でも主力組から外された。
危機感こそ、戦士のエネルギー。
野上は磐田戦では攻守にわたって鬼気迫るプレーを見せ付け、巨大な才能を証明。次の紅白戦で彼は、主力組の証明である白ビブスを手にした。
ただポジションは、慣れ親しんだセンターバックではなく、右サイドバックだった。
川辺駿(背番号8)の展開が少しズレてしまったが、野上(背番号2)が目一杯、身体を伸ばして足先でボールに触り、キープ。身体能力の高い彼ならでは(2月14日対山形戦)
広島はキャンプから、昨年までと立ち位置を変更し、4バックシステムに取り組んでいる。
以前は守備の時は5バックになり、切り替わった時の攻撃人数が足りなくなる。4バックならサイドバックの攻撃参加も含め前の人数を確保しやすいが、今度は「守備の人数が足りなくなりがち」(野上)。
23日に彼の話を聞いた時も「バランスを見てプレーしているけれど、ポジションどりも含め、今は模索中です」と課題を口にする。一方で「サイドバックへの挑戦は楽しみと難しさがあるけれど、使ってもらえることはありがたい」と前をむいた。
広島の高いラインの裏を相手がロングパスで狙うも野上(背番号2)がしっかりとカバー。危機管理能力も一級品
左サイドバックの東俊希が超攻撃的であれば、右の野上はバランス型。城福浩監督は「野上も攻撃のセンスは持っているけれど、東と同じプレーを求めてはいない。まず守備の安定から入って攻撃の力を発揮してくれればいい」と信頼を寄せる。
圧倒的な身体能力、足下の技術、戦術眼、そして闘志。
野上結貴の巨大な才能が新しいポジションで花咲けば、広島も彼も、新しいステージへと進める。
野上結貴(のがみ・ゆうき)
1991年4月20日生まれ。東京都出身。保善高時代はFWや中盤でプレーしていたが、桐蔭横浜大で最終ラインにコンバートされて才能が開花。3年生の時に横浜FCの特別指定選手となり、2013年に同クラブに加入。2016年途中から広島に移籍、センターバックだけでなくボランチでもプレー。横浜FC時代にはサイドバックを経験するなど、ユーティリティ性の高い選手でもある。
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