広島の未来を担う19歳のボランチ=土肥航大は、36歳のベテランに対する憧れを隠さない。
「3列目から味方を使う(柴﨑)晃誠さんのパスに『そこに出すのか!』って唸らされる。前に飛び出した選手を使うプレーも味があるんです」
柴﨑(白の30番)は常に相手の間に立ち、スッと動いてボールを引き出しつつ、軽快なパスでチャンスをつくる。柴﨑のプレーは常にシンプル。しかし、誰にでもできるクオリティではない(2月14日・山形との練習試合にて)
快速サイドハーフの22歳=藤井智也も、柴﨑には絶大な信頼を寄せている。
「晃誠さんがボールを持ったら、必ず素晴らしいパスが出てくる。一緒にプレーできて、僕は楽しいです」
昨年、広島のケーブルテレビが行った選手アンケートで「最も上手い選手」部門のダントツ1位に輝いた稀代のテクニシャンは、若者たちの憧憬の的だ。
一気にスプリントを仕掛けたタッチライン際の藤井(白の15番)に対し、柴﨑(白の30番)は絶妙のスルーパス。あまりのスピードにカメラが追いつかなかった。残念(2月14日・山形との練習試合にて)
「そうなんですか?そんな雰囲気は特には感じないですけど、まあ嬉しいですよね」
飄々。
柴﨑の語り口は、プレーから醸し出す空気感と同じである。
派手なフェイントもドリブルも見せない。「特別なことは何もしていない」と柴﨑は言う。そうかもしれない。
ただ、仔細に彼のプレーを見続けると、唸らされる場面ばかりだ。
ボールを受ける立ち位置は常に的確。
常に周りを見ているから選択肢が多く、ボールも失わない。
パスの強さ・スピードも的確で、駆け引きにも秀でている。
「(柴﨑の技術や存在感は)常にチームを引き締めてくれる」と城福浩監督が信頼を置くのも当然だ。
相手陣内で巧みなスライディングからボールを奪った柴﨑(白の30番)。マイスターは守備でも貢献する(2月14日・山形との練習試合にて)
「今の形(4-2-3-1)ならボールに触る頻度も多いし(ボランチの)自分たちがゴールに絡んでいけば面白くなりそう」
指宿キャンプの練習試合ではセットプレーから得点を何度も演出。2015年、6得点7アシストで優勝に貢献した実績十分のマイスターは今季も健在だ。
柴﨑晃誠(しばさき・こうせい)
1984年8月28日生まれ。長崎県出身。国見高時代は3年連続して全国高校選手権決勝に進出し、2度の優勝。2年時には得点王にも輝いた。2007年、国士舘大から東京Vに加入。川崎F時代には日本代表選出経験も。2014年、徳島から広島に移籍。温厚な人柄から人望が厚く、柏好文や佐々木翔、野上結貴らも彼を慕う。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】