ピッチを離れた時のDF今津佑太(J2甲府から新加入)は、実に温厚だ。どんな質問に対しても真摯に答え、笑い、そして挨拶も欠かさない。
24日から行われている宮崎キャンプでは、テレビの取材クルーに「ポーズをとってください」と無茶ぶりされても笑顔で応じていた。
だが、その優しい今津の姿はピッチ外だけ。サッカーでの彼はまさに獰猛そのもの。相手に激しく襲いかかってボールを奪う野獣のようだ。
FWに前を向かせない力強さとスキルはトレーニングで証明済みである(1月25日撮影)
とにかく強い。圧倒的に、強い。主力組のFW永井龍も、トップ下を務める森島司や浅野雄也も、今津の強さを超えられない。
29日の紅白戦でも、今津はやはり獰猛だった。
右サイドを完璧に崩した浅野雄也のクロスに決定的なタイミングで走り込んだFW鮎川峻に向け、猛スピードで身体を寄せて正当なチャージで吹き飛ばし、シュートすらさせなかったのだ。
「対人の強さは抜群。ポジション争いにも食い込める」と足立修強化部長は評価していたが、その言葉どおりの強靱さである。
(中央に走りこむ白ビブスを着けた長身の選手が今津)カウンターに対しての反応スピードも速くポジションどりも適切。最後のシュートストップは、さらに早い反応を期待したい(1月26日撮影)
ただ、本人は謙虚だ。「様々な面で、今まで(J2での試合で)感じたものとは違ったレベル」と学ぶ姿勢も崩さない。
例えばそれは、林卓人との会話だ。
今津の大学の同期で、林の高校の後輩でもある守田英正(現サンタクララ)の話題で盛り上がりつつ、ビルドアップの時のポジションどりについて林がアドバイス。その言葉を受け、次のゲームでさっそく修正。いい場所でボールを受けることで、次のプレー選択もスムーズになり、攻撃の起点にもなった。
紅白戦の合間に林(中央)と会話。ここで情報を共有しつつ、経験豊富な林のアドバイスに今津は耳を傾ける。その教えをすぐに実行に移せるところも素晴らしい(1月25日撮影)
強さだけではない。この柔軟性、そして知性があるからこそ、甲府時代の2年目に一度はポジションを失いながら3年目に取り戻せたのだと実感した。
「いろんな部分を学びつつ、もっと主体的なプレーを見せたい」
成長の意欲を剝き出しに、J屈指の力を持つ広島のCBたちに挑む真面目な野獣・今津佑太。注目に値する若者である。
今津佑太(いまづ・ゆうた)
1995年7月8日生まれ。山梨県出身。流通経済大柏高で高円宮杯優勝、流通経済大時代も総理大臣杯や全日本大学サッカー選手権で優勝するなどの実績を残し、2018年に甲府加入。1年目からレギュラーを勝ち取って実績を積み、2021年に広島移籍。ちなみに守田とは大学の同期で、林は守田の高校(金光大阪高)の先輩である。
【中野和也の「熱闘サンフレッチェ日誌」】