今年のテニスシーンを振り返る読者アンケート。
「読者の胸を最も熱くした選手」に続く第2弾は、「期待の新星」だ。
最も多く票を集めたのは…?
2021年を迎えた時、彼は世界の141位で、躍進のシーズンを終えた時には、32位に至っていた。
18歳とは思えないパワーや精度に加え、感情的にも安定している点が、将来No.1になり得る選手だと思う。
18歳ながら今季ランキング100位以内に入ると勢いそのままに32位まで登りつめた。US OPENではR32でチチパス相手にフルセットで勝ち切りその後QFまで進出、早くも大舞台でその輝きを放ち始めている
全米オープンでチチパス相手にフルセットで勝利した試合。最後で打ち切る気迫とフォアハンドの自信の表れがすごく勉強になった!
ATPアウォードの“MIP(最も成長した選手)”は逃したが、『それぞれのセンターコート』読者の圧倒的多数票を集めたのは、スペインの新星、カルロス・アルカラスだ。
ちなみにATPアウォードを獲得したアスラン・カラツェフも複数票を獲得。
2世プレーヤーのセバスチャン・コルダに言及する回答も多かった。
今年2月の時点、当時17歳のアルカラスは既に注目の人だった。
全豪オープン開幕を控え、ラファエル・ナダルと練習する姿は、自ずと“ラファ2世”の呼び声を集める。
個人的に印象に残っているのは、同世代の選手やスペイン選手たちに、アルカラスについて尋ねた時。
「彼はものすごく練習熱心で謙虚」
誰もが称賛したのが、篤実な彼の人柄だった。
ウィンブルドンの初戦では内山靖崇とのフルセットの激闘を制したアルカラス
プレーヤーとしてのアルカラスの成長を、端的に言語化してくれたのは、5月に対戦したダニエル太郎だ。
「以前は粗く、強くなるには時間が掛かると思っていたが、強打を続けることで精度を上げてきた。前に踏み込むタイミングは、今のトップ選手と比べても早い」
ダニエルが驚嘆した約4か月後。アルカラスはUSオープンでステファノス・チチパスを死闘の末に破り、世界を驚かせた。
世界を驚かせたUSオープン10代決勝
アルカラスがチチパスを破ったその日、USオープンではもう一つの“波乱”が起きていた。
19歳の誕生日を控えたヒロインの名は、レイラ・フェルナンデス。3回戦で大坂なおみを大逆転で破ったカナディアンは、そのまま決勝まで駆け上がった。
ところが頂上決戦の舞台では、さらなるシンデレラストーリーの体現者が待ち構える。
それが、予選上がりのエマ・ラドゥカヌ。
ラドゥカヌ選手とフェルナンデス選手です。あの年で決勝戦はどちらも勝たせてあげたいと思いました。倒した相手もラッキーでは勝てない選手ばかりでした。
ラドゥカヌ。すべてのショットがそつなくできて、もう楽しみしかない。
エマ・ラドゥカヌ選手、予選からの全試合ストレート勝利での全米優勝が凄かった
誰もが胸を躍らせた19歳対18歳の“次世代対決”は、18歳のラドゥカヌの勝利で掉尾を飾った。
今回のアンケートでも、「新星」として最多票を集めたのが、彼女である。
長引くコロナ禍はスポーツ界にも影を落としたが、テニス界ではツアーが中断していたその間、若手が心技体を鍛え、今季開花した感が強い。
“十代の衝撃”が勢力図を塗り替えるのか? それとも上位勢が押し返すのか?
いずれにしても来季は、テニス史の一つの転換期になりそうだ。
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