「もうちょっとフラットで打って」
4回戦(6月6日第4試合=日本時間7日早朝)を翌日に控えた練習でのこと。錦織が、コーチのマックス・ミルヌイにリクエストした。
この時、錦織が練習していたのはバックのストローク。特に、クロスからダウンザライン(サイドラインに沿う軌道のストレート)への切り返しだった。
ミルヌイコーチの球出しを受け、バックハンドを放つ錦織
バックのダウンザラインは、錦織の代名詞的なショットである。
その脅威は、ロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルも、「彼は、ボールを飛んできた方向とは別の向きに打ち返すという、最も難しいことを簡単にやる」と口にしたほどだ。
そのことを示す数字もある。これは2019年時点でのデータだが、ATPツアー選手を対象とした、バックハンドをダウンザラインに打つ確率を示したものだ。
それによると、1位はラファエル・ナダルの24.5%で、錦織は18.8%で7位。
ただ、ダウンザラインでのポイント獲得率だと、錦織は56.7%で1位に躍り出る。
もっとも、バックのダウンザラインを得手とするのは、次の対戦相手のアレクサンダー・ズベレフも同じだ。
ズベレフのダウンザラインに打つ確率は、15.3%で17位。ただしポイント獲得率では、56.1%で2位につける。
くしくも錦織とズベレフは、今回が3大会連続の対戦。
ここまではズベレフが連勝しているが、直近の対戦では、ボールを広角に打ち分けた錦織が勝利に肉薄した。
果たしてこの全仏で、錦織の3度目の正直となるか?
バックのダウンザラインが、鍵かもしれない。
錦織圭(にしこり・けい)
1989年島根県松江市生まれ。13歳時に渡米し、以降はフロリダ州のIMGテニスアカデミーで腕を磨く。2014年全米OP準優勝。最高ランキング4位。ATPツアータイトル数12を誇る。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】