「あらゆる距離で戦える対応力をつけています」
昨年11月、WBO世界フライ級チャンピオンとなった中谷潤人は現在、「課題克服」に多くの時間を費やしているという。
身長はフェザー級クラスの171cm。フライ級において長身の中谷は、リーチ差を活かした遠距離での戦いが持ち味だ。
しかし、12ラウンドの長丁場で戦う世界戦では、相手が距離感に慣れるのと同時に、疲労により間合いが詰まって接近戦が多くなる。
長いリーチは最短距離で打撃を加えるのに向いているとは言えない。王座獲得の試合でも接近戦で苦戦を強いられ、今後の課題として「近距離」を意識したようだ。
黒いシャツが中谷
トレーナーとのマスボクシング形式で近距離のシミュレーションを重ねる。
相手の打ち終わりや、タイミングを見て体に覚えさせながら打つ。また打つ。
地道なトレーニングになるが、ひたすら繰り返すことで反射的に動けるようになり、対応パターンも自然に増える。
得意の遠距離に加え、近距離での対応力が上がれば、試合をさらに安定して有利に運べるだろう。
フライ級での長期防衛を目標としているが、統一戦も見据えている。
対戦してみたい相手には、WBC世界フライ級王者フリオ・セサール・マルチネスの名を挙げる。
「接近戦がうまくて巻き込まれたら非常にやりづらい。他団体の王者の中でも一番嫌なタイプです。だからこそマルチネスと戦って成長したいです」
あえて自身の苦手なタイプと向き合い、挑戦していく姿勢こそ中谷の強さを支える秘密なのだろう。
近距離での戦い方に自分なりの答えを出した時、さらに手を付けられない強力な王者となりそうだ。
中谷潤人（なかたに・じゅんと）
三重県東員町出身。23歳。現WBO世界フライ級王者。M.Tボクシングジム所属。戦績は21戦21勝16KO。魚釣りが趣味。
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