昨年11月にWBO世界フライ級王座決定戦でジーメル・マグラモをKOで倒し、元号が令和に変わってから初となる、日本人の新世界王者となった中谷潤人。
昨年末に実施したアンケートで「2021年に活躍しそうな選手」として最多票を獲得し、期待の声が多く届いていた。
「まだ若く伸び代十分」
「フライ級で1番の選手になりそうな気がする。苦戦しそうな雰囲気がない」
「(王座奪取の試合で)接近戦で打たせない位置にポジションを変えて自分のパンチだけ当てるのを観て、和製ロマチェンコみたいな感じだった」
「長身でリーチが長く、空手をやっていた背景もあるのか距離感操作が上手い」
「期待していただけるのはありがたいですし、うれしいです。周囲からチャンピオンと呼ばれる機会も増えました」
中学卒業後に単身渡米して以来の念願を果たした中谷だが、練習を見ると、現状にまだまだ満足せず、さらなる高みを目指しているのが分かる。
シャドーでは、鏡を見ながら足の位置を細かく確認しつつアッパーやフックを織り交ぜ、様々な角度をつけて打ち込んでいる。
丁寧にフォームを確認している
さすがは世界を獲った男の動きだ。無駄がなく、ガードの位置が全く変わらない。このシャープな動作により相手はどのパンチが来るのか予測しづらい。
意識しているのは「基本動作を徹底して練習して体に染みこませること」だという。
同じトレーニングの繰り返しは根気がいる作業だが、強い選手こそこれを怠らない。中谷は世界王者になった今でも練習時は2ラウンド(3分×2回)のシャドーを欠かさないという。
「世界を獲ってここからがスタート。これからは、フライ級でもっと名前を売っていきたいです。具志堅さんの防衛記録(連続13回)も抜きたいですね」
この階級での長期防衛を見据えて近道をせず、基礎の精度を一歩一歩高めていくつもりだ。
中谷は、フライ級としては長身の、171cmのサウスポーだ。リーチ差に加えまだ23歳と若く、長期防衛のポテンシャルを十分に備えている。
「世界チャンピオンになれた試合は、自信になりましたけどもう思い出です。もっと頑張らないと」と謙虚な令和のニュースター。これからの活躍と成長に期待は高まる。
中谷潤人(なかたに・じゅんと)
三重県東員町出身。23歳。現WBO世界フライ級王者。M.Tボクシングジム所属。戦績は21戦21勝16KO。魚釣りが趣味。
【木村悠「チャンピオンの視点」】