プロボクシングでもっとも魅力的で選手の名声を高めるのは「派手なKO勝利」だ。多くの選手はそれを目指し、自らの特性を判断してパンチに工夫を加えている。
軽量級に分類されるバンタム級で高いKO勝利率を誇る、栗原慶太(トップ写真左)のパンチを受けてみると、彼の特性と努力の跡が見て取れた。
栗原は体の連動性が特に優れている。股関節を起点としての下半身の力を体幹に伝え、強く、速い打撃をスムーズに相手へ届けている。
当然筋力も必要だが、自分の体の構造を理解し、関節をうまく使う事で効率的に相手へ強い力が伝えられるのだ。
また、ミットの中央部分を目掛けてしっかり打ち込んでいる。「当て感」と呼ばれる感覚だが、彼の場合、体の使い方が正確なためパンチの再現性が高く、それに優れている。
毎回ミットの弾けるような音が響き渡るのも、的を正確に打てているからだ。
KO勝利を生むパンチを出せる選手は、拳自体が硬いハードパンチタイプ、パワーや筋力で打つクラッシャータイプ、タイミングで打つタイミングパンチャータイプに分かれる。
栗原の場合は、クラッシャータイプだろう。たゆまぬ反復で身につけた筋力と、正確な体の使い方によって世界ランカーにまで成長してきたのだ。
一方、KOパンチすべての要素を持っているのが同階級に君臨する井上尚弥だ。
「日本史上最強の選手。海外での評価もすごい。チャンスが巡ってきてもどれだけ通じるかわからないが、戦えたらワクワクはする」と意識し、目標としている。
14日に予定される試合では弟の井上拓真と対戦する。勝てば当然兄である尚弥も意識することだろう。
「しっかりと倒して勝ち切る」と気合十分の栗原。どんな状況でも強く速く、正確なパンチをヒットできる彼の能力に注目してほしい。
栗原慶太(くりはら・けいた)
東京都墨田区出身。28歳。第48代OPBF東洋太平洋バンタム級王者。一力ボクシングジム所属。戦績は20戦15勝13KO5敗。
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