「バイクの暴走で少年院に入っていました」
苦い顔で過去を振り返るのは、強打で東洋太平洋王者まで上り詰め、世界挑戦をうかがう勅使河原弘晶だ。
「今ではとても反省していますが、警察から逃げる時も、捕まったら少年院、逃げ切ったら自由というようにどこか勝負のように感じていました」
元来の負けず嫌いで勝負事が好きな性格を誤った方向で発散していたという。
しかし、1冊の本がその後の運命を変える。
少年院で唯一許された娯楽は読書だった。その時初めてまともに本を読んだという勅使河原が、何気なく手に取ったのは元世界スーパーウェルター級王者・輪島功一氏の自叙伝「炎の世界チャンピオン」。
輪島氏は高校中退後に働きながら25歳でプロデビューし、経済的な困窮に負けず世界王者になった遅咲きの苦労人だ。
「俺もまだやり直せる」と感動した勅使河原は出所後、輪島氏のジムの門を叩き、プロボクサーへの道を歩み始めた。
今でも週1冊の読書を欠かさない。「常に学んでいたい。読書から知識を得ることで、自分を成長させることができる。輪島さんにはボクシングもそうですが、読書の習慣をつけさせてくれたことにも感謝しています」
貪欲に自己研鑽を続けている勅使河原。今後の躍進に期待が高まる。
勅使河原 弘晶(てしがわら・ひろあき)
群馬県佐波郡玉村町出身。30歳。第44代OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者。元WBOアジアパシフィックバンタム級王者。20年8月、世界挑戦を見据え恩師・輪島氏が現役時代に所属した三迫ボクシングジムに移籍。 「てっしー」の愛称で親しまれている。
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