日本ライト級で4連続KO勝利の防衛を果たしている吉野修一郎。国内中量級で最強の呼び声も高い。
そんなエースもかつて競技から遠ざかった経験がある。
父親の影響で幼少からボクシング始めた吉野は、作新学院高では高校4冠を達成し、井岡一翔らを輩出した東京農業大学でもポイントゲッターとして活躍。
言わばエリート街道を進んでいたが、卒業直後はプロに進む気はなく、一般企業に就職したという。
過酷なトレーニングや減量のない日々。しかし、「リングの上で味わった高揚感を思うと、物足りなかった」と当時を振り返る。
社会人になり2年、久しぶりに見に行った試合が転機となった。
歓声、ゴングの音――。生き生きと戦う選手たちを見て「再びあのリングに立ちたいと強く思った」とプロになる決意を固めた。
仕事を辞め名門・三迫ジムの門を叩くが、当時80kgを超える体重になっていた吉野は「プロ志望じゃなくて、一般会員だよね?」と聞かれてしまったそうだ。
「自分の力が通用しなかったら潔く辞めよう」と背水の陣でトレーニングを積み、半年で体重をベストのライト級(61.23kg 以下)に戻しプロデビュー。その後は連勝を重ね、僅か6戦で日本ライト級王者になった。
サンドバッグ打ちをする吉野。常に試合を想定しながらパンチを打ち込む
「前よりボクシングにかける気持ちが強くなりました」
気持ちを入れ替えるブランクがあったからこそ、今の快進撃につながっている。
「今は必ずこの道で成功するんだという覚悟でやってます。家族や周りの方々のためにも上を目指します」
09年に小堀佑介が陥落して以来の日本人ライト級世界王者を目指し、突き進む。
吉野修一郎(よしの・しゅういちろう)
栃木県鹿沼市出身。28歳。第62代日本ライト級王者。第47代OPBF東洋太平洋ライト級王者。現WBOアジアパシフィックライト級王者。三迫ボクシングジム所属。大卒後2年のブランクを経てプロデビューを果たす。戦績は12戦12勝10KOと負けなし。家族は妻と一男。
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