AFCチャンピオンズリーグ2022決勝を戦った影響で1試合消化は少ないものの、今季のリーグ戦も16試合を終え、シーズンはいよいよ後半戦に突入する。今季ここまでのチームの“強み”を紐解けば、リーグ最少12失点を誇る堅守が真っ先に挙がる。1試合平均0.75失点という強固な守備を支えるセンターバック、アレクサンダー ショルツとマリウス ホイブラーテンのふたりに、その秘密と自信を聞く。
■期待していた通りのコメント
――浦和レッズはリーグ戦16試合を終えて、リーグ最少の12失点です。CBでコンビを組む2人は堅守の要因をどこに感じていますか?
マリウス ホイブラーテン(以下:マリウス) まずは、チーム全体として連動した守備ができていることが大きいと思っています。なかでも、最終ライン4人の動きは常にリンクしています。それ以外にも毎試合、GKの(西川)周作がファンタスティックな仕事をしてくれていることも忘れてはいけないですね。失点が少ないことで、センターバックである僕らを称賛してくれるのはうれしいですが、実際は前線からハードワークしてくれていることが、今の結果に繋がっています。シーズン後半戦も、この数字を維持していくことを目指していきたいですね。
アレクサンダー ショルツ(以下:ショルツ) 僕が言いたかったことを、マリウスがほとんど言ってしまいました(笑)。なので、強いてセンターバックであるお互いについて触れると、試合前は常に『Do your job』、お互いの仕事をしっかりやろうと話しています。それを今後も継続していくことが、失点しないこと、また勝利に繋がっていくと考えています。
――ホイブラーテン選手は今季加入したばかりですが、まるで何年も前からコンビを組んでいるかのような関係性に見えます。お互いのプレースタイルをどう理解し、どう評価していますか?
マリウス ショルツは経験が豊富なので、パートナーとしてはとてもプレーしやすいですね。僕だけでなく、チームメート全員の特長もしっかりと把握している。だから、みんなの小さな変化にも敏感に反応し、すぐにアジャストしている印象です。
ショルツ 期待していた通りのコメントでした(笑)。
マリウス 本当にストロングポイントがたくさんあるので、どこを挙げればいいか迷ったくらいです。動きや指示からも、自信を持ってプレーしていることは伝わってきますし、試合中に彼が何を求めているのかも分かりやすい。隣にいて常に頼もしさを感じています。
ショルツ マリウスとは、お互いにどういうプレーを選択するのか、予測しやすいところがあります。そうしたところもセンターバックにとっては、重要な要素だと感じています。ただ、(6月18日の)YBCルヴァンカップの清水エスパルス戦では、お互いのミスにより失点を喫しました。
マリウス 僕も期待どおりのコメントでした(笑)。
ショルツ ただ、忘れてはいけないのは、チームにはタク(岩波拓也)やワンちゃん(犬飼智也)、テツ(知念哲矢)といった素晴らしいセンターバックがいます。彼らがいることで、僕らは毎試合、ひとつもミスは許されないという緊張感につながっています。
■世界最強のコンビではないからこそ
――ショルツ選手は以前、マリウス選手とは、守備において同じ指導を受け、同じ哲学を持っているため、プレーが合わせやすいと話していました。それはどういったプレーや考えなのでしょうか?
ショルツ 例えば、マリウスがある動きをしたときに、僕も同じプレーを選択しただろうと感じることが多々あります。フィーリングと言ってしまえば、それまでですが、サッカーは秒単位の判断が結果につながるので、その判断や感覚が合う、合わないというのは非常に重要だと考えています。
――その細かいところが守備においては大切ということですよね?
ショルツ サッカーは、選手それぞれの基準が大きく影響します。子どものときから、同じような考えのもとで指導を受けているので、体に動きが染み込んでいて、瞬間的な判断やスピードにつながっています。
マリウス 個人的には、指導や教育はもちろん、お互いの性格的なところも大きいと感じています。僕らは相手にアダプトする能力に長けている。また、自分たちは世界で最強のセンターバックコンビだとは思っていないので、常にお互いに状況を見て、読み、考え、ベストを探しながら、プレーしています。
――リーグ最少失点を記録しているだけに、世界最強とは言わずとも、リーグ最強のコンビという自負はあるのではないですか?
マリウス そこへの考え方やメンタル的な部分も大きいかもしれません。自分たちのことを、仮に世界最強やリーグ最強だと思って、慢心してしまえば、そこで成長は止まってしまいます。常に向上しようとする姿勢を持ち続けなければいけない。そうした考え方についても、僕らは共通しているところが多いかもしれません。
■日焼け止めを塗りまくっている
――話を聞いていると、現状に満足せず、謙虚な姿勢を持ち続けていることが、強固な守備を構築している理由に感じます。
ショルツ 確かに我々から得点を奪うには、相手もかなりのクオリティーを要するのではないかという自負はあります。ただ、そうした強固な守備ができるようになった背景としては、リーグ開幕から連敗したことがあったと感じています。その2試合で、我々はあまりにも簡単に失点を許してしまいました。そこから本当にチームとしてハードワークし、オーガナイズしてきたことで、今のような守備が構築できるようになりました。
マリウス 僕も、自分たちは常にハングリーな気持ちを持ち続けなければいけないと思っています。その精神がなくなった時点で、自分自身もベストパフォーマンスを維持することはできなくなる、と。自分としては、相手FWに絶対に負けない姿勢が、それに当たります。また、相手に負けないためには鋭敏さも大事になります。僕らがシャープさを保てれば、最低でも勝ち点1は手にすることができるはずです。
――そういう意味では、これから夏になり、気温や湿度が高いなかでの戦いを強いられます。マリウス選手にとっては初めて経験する日本の夏ですが、ショルツ選手は気候についてもすでに伝えているのでしょうか?
ショルツ マリウスには、僕だけではなく、在籍している全外国籍選手が日本の夏の厳しさについて伝えています(笑)。
マリウス 最近は気温も湿度も上がってきているので、少しずつ日本の夏を感じ始めています。おかげで日焼け止めが手放せなくなりました。最近の僕のあだ名が『サンスクリーン(日焼け止め)』になっているくらいに(笑)。
ショルツ 僕も日焼け止めはしっかり塗っていますが、僕が1本使い切るときに、マリウスは3本も消費しています。それくらいマリウスは日焼け止めを塗りまくっています(笑)。
マリウス 肌のケアをしっかりしておかないと、自分のパフォーマンスに影響しかねないので(笑)。
――最後に、リーグ後半戦への意気込みも聞かせてください。
マリウス 今まで自分たちが培ってきたことを継続することが重要になってきます。1試合1ゴール以下というこのスタッツも維持していかなければならない。ただし、現状に満足することなく、強固な守備は継続しつつ、攻撃ではもっと多くのゴールを奪っていくことが求められると思っています。
ショルツ また、マリウスに言いたいことを先に言われてしまいましたね(笑)。他に挙げるとすれば、我々が常にチームを助けられる存在になっているかを、お互いに確認し合いながら後半戦も戦っていければと思います。
(取材・文/原田大輔)