2月に母国のノルウェーから初めて来日し、まず向かった食事処は寿司屋だった。
大将が握ってくれるカウンターの高級店ではない。タッチパネル式で注文する庶民的なお店である。
浦和レッズの最終ラインを引き締めるマリウス ホイブラーテンはディフェンダーらしく、手堅く馴染みのあるサーモンの握りから頼んだ。
「ネタがすごく新鮮で、すごく美味しかった。なんと言っても、ノルウェーの寿司屋とはシャリの質が違います。シンプルな味付けですが、日本で食べる握りはいいですね」
安心できる同じネタをいくつか頬張った後、赤身のマグロ、白身、カニとさまざまなネタにトライ。もちろん、すべてサビ入りだ。初めて口に入れる魚も多かったものの、どれもこれも口に合った。一番のお気入りを尋ねると、恐縮しながら話してくれた。
「少しつまらない答えになってしまいますが、サーモンの味が好きですね。ただ、いろいろな種類のネタにチャレンジし、すべて美味しく食べました」
グルメな28歳のノルウェー人は先日、また新たな日本食に挑戦したという。暖簾をくぐった先はうどん屋さん。席につき、麺を口に運ぶと、思わず感嘆した。
「とてもシルキーで滑らかな口当たりでした。肉(ビーフ)とのコンビネーションも良かったです。『肉うどん』というメニューなの? そうでしたか。『七味』と呼ばれるスパイスもうどんには合いますね。ノルウェーでは見かけない調味料でした」
そして、チームメイトたちに勧められ、すっかり虜になっているのは納豆。初めて食べたときは食感に違和感を覚えたものの、2回目、3回目になってくると、気がつけば癖になっていた。匂いも全くに気にならない。
「最近ではキムチをトッピングすることもあります。味付けをアレンジしているんです。昨夜も白米の上に納豆を乗せて、食べたばかり」
最近のお気に入りはライスボール。英語で羽生直行通訳に必死に説明しているが、なかなか判然としない。丼のイメージはできたが、果たして何丼なのか?
「ライスの上に肉がシンプルに乗っているんだよ。うーん、料理名が分からない」(マリウス)
「その肉はビーフなのか、ポークなのか、チキンなのか?」(羽生通訳)
「ビーフだった。ライスとすごく合って、すごく美味しかったんだよ」(マリウス)
「それは牛丼だ!」(羽生通訳)
「あれはギュウドンという料理なのか!」
まだ冒険は始まったばかり。これからも食わず嫌いにならず、あらゆる料理にトライしてみるつもりだ。
今、最も興味をそそられるのは、『ヌードル・パンケーキ』とか。頭を巡らせながらまた英語で熱く説明してくれたものの、想像力の乏しい記者はぽかんとするばかり。もしかしてスイーツなのかと思っていると、その隣で羽生通訳が反応した。
「広島焼きですね。マリウスは、麺入りのお好み焼きを食べたいようです」
食通のファン・サポーターのみなさま。浦和でおすすめのお好み焼き屋があれば、マリウスに教えてあげてください。
ただし、メニューに広島焼きがあることが条件になります。
(取材・文/杉園昌之)
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