5月17日、イタリアで快挙を成し遂げた同胞のニュースを耳に入れると、アレクサンダー ショルツは満面の笑みを浮かべて喜んだ。
「デンマークのマグナス コルト ニールセンは本当に素晴らしい選手ですよ。昨夜、ベッドに入る前にスマートフォンで30分だけ見ていたのですが、そのあとは見ることはできなくて……」
グランツールと呼ばれる世界3大自転車レース『ジロ・デ・イタリア』の第10ステージで、初の区間優勝を果たしたプロサイクリストの話である。ショルツは、筋金入りの自転車レース好きなのだ。
デンマークで過ごした幼少期は、暇を見つけては友人とサイクリングを楽しんでいたという。昔からグランツール(ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)、クラシック(欧州各地で開催される格式あるワンデーレース)は毎年のようにテレビ観戦してきた。
昨年、世界最高峰のツール・ド・フランスで総合優勝を飾ったデンマーク人のヨナス ヴィンゲゴーの名前を出すと、目を輝かせた。
「1996年にもデンマーク人(ビャルヌ リース)がツールで総合優勝しているんですよ。昨年のツールはスタートがコペンハーゲンだったこともあり、第1ステージからキャスパー ユンカーとふたりで見ていました」
最近は家族と過ごす時間に加え、日本語の勉強なども忙しくて、すべてのレースを見ることはできていないが、時間の許す日はスタートからゴールまで6時間近くテレビの前に座り続けることもある。
「ベルギーのスタンダール・リエージュでプレーしている頃は、現地で開催されるクラシックのリエージュ~バストーニュ~リエージュを直接見に行きました」
長く過ごしたベルギー時代を懐かしむ。クラシックの開催日は、試合後のバスでテレビに映し出されるのはサッカーではなく、自転車レースだった。ベルギー国内の関心は高く、選手たちもレースの行方を気にしているのだ。
「ロンド・ファン・フラーンデレン(ベルギー開催)も必ず見ていました。自転車レースはメンタルの強さが試されるスポーツ。すごく魅力があります。コースの風景を見るだけでも楽しめます。コメンテーターたちはみんな知識が豊富で、その土地の文化と歴史も合わせて、解説してくれるところも気に入っています」
自転車レースの話をしていると、思いがあふれてくる。日本ではロードバイクに乗っていないが、いずれは購入する予定だという。
「引退したらサッカーボールは蹴らず、遠出できるロードバイクでサイクリングを楽しむつもりです」
ただ、自転車に乗る日はまだまだ先の話になりそうだ。今はJリーグ制覇に向けて、毎日、体をしっかりケアし、コンディションを整えることに専念している。
(取材・文/杉園昌之)
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