勝者の歓喜の声は時に、敗者に対する最高級の賛辞になる。
決勝の激闘を制したダニエル太郎は、「パズルを解いたようでホッとした」と、勝利の瞬間の想いを表現した。それは、対戦した清水悠太が、「凄くトリッキーで攻撃的。フォアでどんどんウィナーを狙ってくるので、プレッシャーが凄かった」ための安堵である。
そのダニエルの言葉を伝えると、清水は照れた笑みをこぼして「サーブが良くなり3本目で攻められるようになったので、そう見えたのかもしれません」と言った。
切れ味鋭いサーブをコーナーに打ち込み、相手のリターンを迷いなくフォアで叩いてウィナーを決める清水
ツアー中断中に強化したサーブで相手を崩し、甘くなったリターンをフォアですかさず叩き込む。ツアー優勝経験者のダニエルに精神的な圧力を掛けた攻撃力の訳が、そこにあった。
今大会ではダニエルと2度戦い、いずれも接戦で敗れた清水。
「2度も負けたら実力と認めざるを得ない。また練習して、臨むだけです」
手にした武器で、進む道を切り拓く。
清水悠太(しみず・ゆうた)
滋賀県出身、21歳。身長163cmと小柄ながら俊敏性と高度なテクでジュニア時代から活躍し、世界ランキングも自己最高位(313位)を更新中の成長株。
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ダニエル太郎(だにえる・たろう)
ニューヨーク出身、27歳。回転量の多い重いフォアとミスの少なさを誇るストローカー。ツアー中断中にサーブやボレーも強化し、191cmの長身を生かした攻撃力に磨きを掛ける。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】