川口夏実——ジュニア選手も追っているテニスファンなら、覚えのある名だろう。
2019年の全豪オープンジュニア部門で、ダブルスを制したサウスポーの子だと言えば、あーと思い出す人も多いかもしれない。
錦織圭らを輩出したことで有名な盛田正明テニスファンドの支援を受け、渡米したのが14歳の時。以降、18歳まで支援更新基準を毎年クリアして、今年4月に女子では初の“盛田ファンド卒業生”となった。
「コロナ禍ということで特別に支援を半年延長して頂いたので、盛田ファンド最年長ですよ」
そうカラカラと笑う彼女は、この11月は兵庫県ビーンズドームで、強化合宿に挑んでいる。
盛田ファンド卒業後は、東京都町田市を拠点とする川口が、兵庫県三木市に足を運んだ主な理由は、フィジカル強化のため。
ビーンズドームで川口を預かる竹内映二コーチは、川口を「欧米勢にも打ち負けない」と評すると同時に、「いろいろ雑」と苦笑いをこぼした。
サウスポーの特性を生かし、ワイドに切れるサーブのコントロール向上を狙った練習に励む
その見解は、フィジカル強化を担当する横山正吾トレーナーも同じ。
「出力はありますが、そのパワーを制御しきれていない」
だからこそ、まずは走り込みで土台を強化。
その上で、精緻なコントロールを可能にするために、どの部位を使っているか意識しながら個々のパーツを鍛えているところだ。
「きつーい!」「明日、絶対筋肉痛!」
時に悲鳴をあげながらも、川口は与えられた課題をこなしていく。
彼女自身、身体の使い方の習得が必須なのは重々承知。それはフロリダのアカデミー滞在時に、フィジカルとフットワーク強化に取り組んで、全豪ジュニアを制した成功体験があるからだ。
悲鳴をあげつつも、トレーナーと二人、ジムで居残り特訓に励む川口
ちなみにビーンズドームでの出張合宿期間は無期限。
横山トレーナーがゴーサインを出した時が、終了の日だという。
「そんな日、来るのかなぁ」
口にする不安の言葉とは裏腹に、表情と声は抜けるように明るい。
かつてのトップジュニアは大器に磨きをかけ、「フォアで組み立てて支配するテニス」の完成を目指す。
川口夏実(かわぐち・なつみ)
2002年6月28日生まれ、長崎県出身。姉の影響でテニスを始め、小6時に全国選抜ジュニアと全国小学生大会を制覇する。コロナ禍とケガで1年ほど試合に出られなかったが、復帰2大会目となった10月のITF$15000で準優勝。「リズムが戻ってきた」と表情も明るい。
【内田暁「それぞれのセンターコート】