まずは、このダイナミックな片手打ちのバックハンドをご覧頂きたい。
彼の名は、山中太陽。今年3月にプロに転向した18歳だ。
4歳でテニスに出会った時から片手バックハンドを貫いてきた山中は、この年代のプロ転向組としては“遅咲き”の部類かもしれない。
小学生の頃は、地元の兵庫県でも10番手前後。その彼が一気に開花したのは3年前、全日本ジュニア16歳以下で優勝した時だ。
世界では若手を中心に徐々に復権している片手バックだが、日本ではまだ少数派。
その事実と山中が遅咲きだったことは、偶然ではないだろう。小柄で筋力の低い子どもが、片手でバックハンドを打つのは至極困難。勝ちたければ両手打ちを選ぶのは、自然な流れである。
だが、アニメ『テニスの王子様』の主要キャラを真似てテニスを始めた山中にとって、バックハンドといえば片手打ち。彼にとって幸運だったのは、「子どもの時のコーチが片手バックを認めてくれ、どんどん攻撃していけというタイプだった(山中)」ことだ。
コロナ禍によりプロキャリアの出足は予定より遅れたが、その間、リターンを中心にバックハンドも強化してきた。
8月からいよいよ本格的に、磨きを掛けた武器を携え世界へと切り込んでいく。
山中太陽(やまなか・たいよう)
兵庫県出身18歳。14~15歳の頃から頭角を現し、高校卒業と同時にプロ転向。現在はオーストラリア人コーチと共にサーブやボレーにも磨きをかけ、持ち味の攻撃力アップを測っている。JTAランキング116位。
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