緊急渡航、2週間の厳格な隔離、そして隔離明けの解放感――。
なにもかもが初づくしの中で迎える今年の全豪オープンには、もうひとつ、ユニークなことがある。
それがこの2週間、選手たちは同じ相手と練習し続けてきたことだ。
通常選手たちは開幕数日前に会場入りし、一日1~2時間の練習相手を、その時々で現地調達する。
だが今回は、隔離期間中も1日2時間のオンコート練習が確保され、その相手は基本固定。練習相手は、事前に選手間で決めて登録するが、状況によっては大会側に一任する場合もある。
内山靖崇は2週間、長身サウスポーのイジ・べセリーと練習をともにした。
べセリーを練習相手とした理由を、「この数ケ月、ずっと球筋のきれいな日本人選手と練習してきたので、腕っぷしで打ち込んでくる選手と練習したかった」と明かす。
その狙い通り、充実の練習期間は過ごせた。ただサウスポーと打ち合ってきたため、右利きのボールに慣れていくことが急務かもしれない。
西岡良仁の練習パートナーは、ウィンブルドン・ベスト8などの実績を持つ台湾のルー・イェンスン。
人格者として知られるイェンスンは、練習に向かう姿勢も西岡曰く「めちゃくちゃ真面目」。毎日集中した2時間を過ごすことができた西岡は、「ついてました。適当な選手との練習だったら、大変だったろうから」と笑みをこぼした。
フォニーニとの練習で、バックハンドでウイナーを決める錦織(手前)
一方、完全隔離だったため対人練習が出来なかった錦織圭は、隔離明けと同時にA・ズベレフらトッププレーヤーと連日球を打ち合っている。
とはいえ、「なるべく最初は、本当にゆっくり」という状態。真面目なオールラウンダーから天才肌、ビッグサーバーなどあらゆるタイプの選手と練習しながら、徐々に実戦の感覚を取り戻していく。
不確定要素が多いなか迎える今年の全豪OPでは、誰と練習してきたかもまた、大会序盤の命運を左右しそうだ。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】