全豪オープンを取材すべく、メルボルン入りした日の夜。錦織圭も乗るチャーター便に、新型コロナの陽性者が出たとの報が駆けた。
その後も陽性者は複数確認され、最終的にはダニエル太郎を含む72人の選手が、部屋から一歩も出られぬ完全隔離となる。
このニュースは連日、地元のテレビを賑わせていた。メルボルン市は、昨年6月から厳格なロックダウンを施行し、年末には市内感染者ゼロを実現したばかり。感染拡大を不安視する向きは、少なからずあったようだ。
入国早々に完全隔離となった選手たちの、動揺や不安は当然大きい。
オーストラリア到着してます。
— Misaki Doi 土居美咲 (@MisakiDoiTennis) January 15, 2021
長旅でした🇦🇺
ホテルの部屋の入り口でコロナ検査するというなかなかシュール。。笑
厳戒態勢です‼️ pic.twitter.com/xa7gCMg6w9
運営側とのミーティングでは「あの選手の部屋にはスピンバイクがあると聞いたが、自分の所にはない」「アデレードに滞在しているトップ選手たちは、自由に練習できているらしいぞ」など不満や懐疑の声が相次いだ。
それら選手の声に大会側は、迅速かつ真摯に向き合ってきたようだ。
完全隔離の選手には種々のトレーニング器具を配給し、リモートでのトレーニング指導なども実施。また、「アデレードの選手も、練習条件はメルボルンと全く同じ」とも明言した。
ここで言う「メルボルンでの練習条件」とは、選手たちに伺ったところ、次のようなものだ。
練習のため部屋から出られるのは、1日5時間。内訳は、練習場への移動が片道15分、コートでの練習が2時間、ジムでのトレーニングが1時間半で、1時間が食事など。
練習会場も、複数設けられている。
本戦出場のシングルス選手は基本的に大会本会場で、ダブルス選手は会場から少し離れたテニスセンター。本会場に隣接するナショナルテニスセンターも、練習場所に充てられている。こちらでは、駐車場にトレーニングマシンを並べてジムにするなど、工夫が凝らされているようだ。
制約の多い中での練習ではあるが、選手からは、懸命に働いてくれるスタッフが心をほぐしてくれるとの声も聞く。
日比野菜緒は「マスク越しにも分かる笑顔で応対してくれるので、こっちも明るい気持ちになれます」と言った。
チャーター便が入国した5日後、完全隔離に入った選手からも、PCRテストで陽性反応が出たことが公になった。
これ自体は残念なことだが、皮肉にも、徹底した隔離対策の正しさを証明する結果にもなったようだ。
隔離生活5日目のアップデート。全然元気です。トレーニング道具も沢山送ってもらい充実した日々を送っています! pic.twitter.com/Z7KbnRtvTm
— ダニエル太郎/Taro Daniel (@tarodaniel93) January 20, 2021
メルボルンの人々が経てきたロックダウンの厳しさ等を知るにつれ、選手からの不満の声も沈静化しつつある。
それぞれが現状を受け止め、なんとか前を向こうとしている――それが、全豪開幕まで10日ほどに迫った今の空気感のように思う。
全豪隔離体験録~出発→ホテル到着編~
【内田暁「それぞれのセンターコート」】