【2020年末に行ったアンケートでは多くの回答を頂き、ありがとうございます。今回は「あなたが考える2021年に活躍しそうな『推し選手』を教えてください!」を踏まえた記事をお届けします】
「ことし(2020年)はコロナと怪我で試合がほとんどできなかったが、それがいい休養になって違ったプレーを見せてくれそう!」
「ケガから復帰してどれくらいできるか、結婚して迎える2021年はどうなるか注目です」
「オリンピックもあるし、何よりもう一度グランドスラム大会で輝く姿を見たい」
これら復活への期待、そして何より、再びコートを躍動する姿を見たいという渇望の声を集めた選手は――。
今更もったいぶるまでもないだろう。得票数でも1位になったその選手とは、長く日本テニス界を牽引してきた、錦織圭である。
2019年10月に肘にメスを入れ、そのリハビリの最中にコロナ禍によるツアー中断を迎えた錦織の復帰戦は、2020年9月までずれ込んだ。その後は、年末まで可能な限り多くの大会に出る予定でいたが、全仏オープンで肩を痛め、以降の試合は全て欠場することに。
2勝4敗の戦績でシーズンを終えることとなった。
結果的に錦織の、2020年シーズン最終戦となったのは、全仏2回戦のステファノ・トラバリア戦。
「全仏オープン2回戦、錦織VSトラバリアの試合。錦織故障明けでは、一番手応えある試合。肩痛そうで心配も、勝つ為に、全力で立ち向かう姿に感動」
4時間に迫るフルセットの惜敗だが、錦織はこの試合を、復帰後で「一番よかった試合」だと断言している。
「今日はラケットが振り切れていて、安定感はないもののプレーは良かった」
それが敗れてなお、錦織の声や表情に力感がにじむ理由だった。
錦織の言う「ラケットが振り切れていた」という感覚は、相手を上回るウイナーに数字として現れている。特に16本のウイナーを決めたバックハンドこそ、錦織の真骨頂と言えるだろう。
2020年の全仏オープンで、念入りにバックハンドの練習をする錦織
バックハンドは多くの選手が、「世界屈指」と畏怖する錦織の武器。ラファエル・ナダルやロジャー・フェデラーも「クロスの打ち合いから、コースを変える技術が凄い」と舌を巻くほどだ。
その事実を裏付けるデータもある。
Tennis abstractというデータ解析サイトによると、錦織がバックのストロークをダウンザライン(ストレート)に打つ確率は18.8%。そのうちウイナーになるのは27.7%で、ナダルの12.1%、ノバク・ジョコビッチの16.7%を大きく上回る。
さらには、ダウンザラインでのポイント獲得率だと56.7%。これは、データ収集の対象となった選手の中で最高の数字だ。
ダウンザラインのウイナーに象徴されるバックハンドは、錦織が取り戻しつつある伝家の宝刀。
一方で、復帰後に体得した新たな武器もある。
それが、ネットプレーだ。
全仏オープンの初戦で、錦織がネットプレーで奪ったポイントは全体の約3割。2回戦でも18%強のポイントをネットプレーで取っている。それまでの錦織は、総獲得ポイントにおけるネットポイントが8%台。変化したプレースタイルの背景には、長いラリーを避けて試合を短縮し、疲労やケガを減らす狙いがあるだろう。
「今年は、怪我に泣かされ不本意なシーズンでしたが、ネットに詰めてのボレーが大好きです」
攻撃性とダイナミズムを増したプレーは、ファンの心もつかんでいる。
昨年末のエキシビジョン時に行われた会見で、「進化したいという気持ちは今もあるか?」と問われた彼は、「あります。増えているくらいです」と即答した。
その想いが、いかなる花を咲かせていくのか――?
進化のプロセスを見られる我々は、幸運だ。
錦織圭(にしこり・けい)
1989年島根県松江市生まれ。13歳時に渡米し、以降はフロリダ州のIMGテニスアカデミーで腕を磨く。2014年全米OP準優勝。最高ランキング4位。ATPツアータイトル数12を誇る。
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