開幕2日前の25日。外では冷たい雨が赤土を激しく打つ中、新設されたセンターコートの屋根の下でボールを強打するのは、“赤土の王”ことラファエル・ナダル(動画奥)。3階席まで轟く打球音が、そのインパクトの激しさを物語る。
ただ、試合では強烈なスピンを掛けボールを相手の肩口まで弾ませるナダルだが、この日の練習ではフラットで打ち抜く場面が多く見られた。
その理由はどうやら、会見でナダル本人が口にした言葉にありそうだ。
「今大会のボールは、もの凄く“重い”」
これは、本来5月に開催予定だった大会のコロナ禍による延期、そして大会の公式球が今年から別のメーカーに変わったことが理由に挙げられる。ナダルいわく、今年のボールはただでさえやや硬い。それが、日中でも10度前後までしか上がらなかった気温や高い湿度と相まって、一層、重く感じられたという。
重いボールは、スピンが掛かりにくく跳ねにくい。あまりに例年と異なる打球感に、ナダルは「この状況下ではどのような打ち方が正しいのか、それを練習では模索しなくてはいけない」と言った。
例年より4か月遅れで、いよいよフレンチオープンが27日に開幕する。
大会4連覇、そして13度目の戴冠を狙う“キング・オブ・パリ”にとっても、今年は未知のチャレンジになりそうだ。
ラファエル・ナダル
1986年6月3日生まれ、スペイン・マヨルカ島出身。ジュニア時代から頭角を現し、わけてもクレーコートで圧倒的な強さを誇るため“キング・オブ・クレー”の異名を取る。全仏OPでは他の追随を許さぬ12回の優勝を誇り、グランドスラム総獲得数は19。なお叔父は、元サッカースペイン代表の名ディフェンダーのミゲル・アンヘル・ナダル。
【内田暁「それぞれのセンターコート」】