ベースラインから下がらない!
コートサイドからダニエル太郎の試合を見た時、真っ先に頭に浮かんだのが、その言葉だ。
高いポジションを保ち、深く強いボールで相手にプレッシャーを掛け続けるダニエル
ダニエルといえば、コートの後方に下がり、走りまくり、拾いまくり、粘って粘ってポイントをもぎ取るのが、かつての姿。
本人も自分の強みを、「苦しみに耐えられる力」だと述懐したほどだ。
その彼が今大会では、ボールの跳ね際を叩き、ネットに出てボレーも決める攻撃型に進化。それは「変わらなくては」との覚悟を胸に、自ら踏み出した新境地だった。
新たなスタイルへの水先案内人となったのは、1年半前から師事する新コーチだ。
ダニエルの横に立つスベン・グローネフェルトは、ロジャー・フェデラーやマリア・シャラポワらのコーチを歴任した名伯楽。
テニス界の超一流のレベルと潮流を知る彼は、コーチ就任と同時に、ダニエルに「もっと強いボールを打つ」ことを求めたという。そのためにラケットの重量を上げ、早いタイミングでボールを打つよう指導した。
ダニエルも「相手のパワーを利用することで、強いボールを打てることが分かった」と、新コーチの慧眼に全幅の信頼を寄せている様子。
「まだ長いプロセスの途中」とダニエルは言うが、特にクレーシーズンに入ったこの数か月で「多くを学べている」と語気を強めた。
全仏オープン予選は、ここまで2試合ともにストレートの快勝。現地時間27日夕(日本時間27日深夜)に本戦の切符をかけ、予選決勝を戦う。
ダニエル太郎(だにえる・たろう)
1993年1月27日、米国ニューヨーク市生まれ。アメリカ人の父親の仕事の都合で、幼少期からアメリカ、日本、スペインに移り住む。
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