先日、ビッグマッチがあった。
3階級王者の井上尚弥と、元WBC世界フライ級王者で現在WBO世界バンタム級8位の比嘉大吾の対戦だ。
新型コロナウイルスと戦う医療従事者や患者を支援する目的で開催されたチャリティーイベント「LEGEND」。OBを含めた実力派のボクサー12人が、スパーリングマッチという形で拳を交えた。
井上と比嘉は同階級のため、将来的に実戦での対戦も十分にあり得る。必然的に、会場のボルテージも上がった。
ゴングが鳴ってすぐ、井上の「異変」に気づいた。ファイター型の比嘉を真っ向から迎え討っている。
井上が数々の難敵を倒して世界最強とも称される王者になりえたのは、相手の土俵で戦わないうまさにある。
「来てくれた方に満足して帰ってもらいたい。盛り上げるために相手の距離でもやろうと戦った」(井上)
一方、自分の「間」で戦えているはずの比嘉だが、パンチが当たらない。プレッシャーと手数が武器の比嘉の持ち味が一向に見えてこないまま、スパーは終わった。
比嘉は「1ラウンドで疲れた。3分が長く感じきつかった。今は厳しい」と率直な感想を語った。試合でもスパーでも、自分が主導権を握っていればそこまで疲れない。
井上との実力差や自分に足りないものがわかったはずだ。
「今後は自分次第。自分が行けないところではない。最高の状態で勝負したい」(比嘉)
得たものが多かったのは、間違いなく比嘉の方だろう。いつかガチンコのリングで、2人の対戦が見たい。
比嘉大吾(ひが・だいご)
沖縄県浦添市出身、25歳、Ambition GYM所属、元WBC世界フライ級王者。戦績17勝(17KO)1敗1分、18年4月、3度目の防衛戦で計量失敗によりライセンス無期限停止。19年9月停止処分解除。バンタム級で復活を期す。
井上尚弥(いのうえ・なおや)
神奈川県座間市出身、27歳、大橋ジム所属、現WBAスーパー・IBF世界バンタム級王者。戦績20戦20勝(17KO)、WBSS優勝、PFPランキングで上位に格付けされるなど国内に留まらず世界での評価も高い。
【木村悠「チャンピオンの視点」】※写真は全て©LEGEND実行委員会