試合の組み立てやコンビネーション習得を目的とするミット打ちは、多くのボクサーにとって楽しみな練習でもある。
トレーナーとコミュニケーションを取りながらパンチを躊躇なく打てるため、モチベーションを上げるのにもってこいだ。
しかし、三代は「気持ちよく打たないように意識しています」と話す。
試合を見ているようなミット打ち 相手を警戒しながらパンチを打ち込んでいる
「ハッキリあたるパンチはトレーナーにも見えているので実戦向きではないでしょう。あえて間を外して打つことを意識しています」
動画を見ると、打つ側と受ける側で駆け引きが行われているのが分かる。
三代は決して構えに合わせず、自分のタイミングで打ち込んでいる。
「トレーナーがパンチをとり損ねるのが理想です。受ける方はイライラするでしょうね」と不敵な笑みを浮かべていた。
常に実戦を想定している練習からはストイックさとクレバーさが感じられる。頭を使った密度の濃い練習で成長速度も倍増するはずだ。
昨年末からライト級を主戦場にしている。
東洋太平洋スーパーフェザー級王者である三代の参戦に周囲は沸くが、「まだ世界を戦う目線では見られてないし、届く位置にいない」と本人は冷静に牙を研ぐ。
今年は勝負の年になるだろう。一気に世界へ飛躍する姿を期待したい。
三代大訓(みしろ・ひろのり)
島根県松江市出身、26歳、ワタナベボクシングジム所属、第44代OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王者。戦績は12戦11勝(3KO)1分、2020年度ボクシング年間表彰で、顕著な活躍を見せた若手選手に贈られる、プロ部門「新鋭賞」を受賞。
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