ボクシングを追い続けるカメラマン・福田直樹氏は、試合の決定的な瞬間を撮り逃さないことから「パンチを予見する男」として、世界のファンから認知されている。
福田氏に「最近の試合から最も印象的な1枚」を選んでもらった。
それが2020年度の日本ボクシング年間表彰で年間優秀試合に選ばれた、4階級王者・井岡一翔と3階級王者・田中恒成が激突した際の写真だ。
激しい相打ちのシーン。井岡の右フックと、田中の左フックが交錯し、お互いの顔面を捉えた瞬間の見事な写真だ。
偶然の産物ではない。驚くことに試合前から狙っていたものだという。
「お互いの魅力がぶつかり合う一戦の象徴として、打ち合いのシーンもできれば撮っておきたいと狙っていました」
福田氏は相打ちを狙う場合、序盤で試合を俯瞰的に見て「試合全体の波動のようなもの」を感じるように努め、二人が同時に踏み込む瞬間を待つという。その上でさらに展開を細かに分析する。
「田中選手が仕掛けて、井岡選手が対応する展開でしたので、俯瞰で見ながらも先に動く田中選手のリズム、踏み込みにより注目していました」
撮影ポジションからはっきり見えた相打ちの場面は、試合中盤のこの一度だけ。経験と長年培った技術だからこそ、チャンスを捉えられた。
「写真をアーカイブとしても後世にしっかり残さなければならないような名勝負。長年ボクシングを見てきた経験が多少役立ち、撮影できました」
世界一のカメラマン 福田直樹さんから写真を頂きました。
— 京口紘人 Hiroto Kyoguchi (@HirotoK1127) May 22, 2018
いつも素晴らしい写真ありがとうございます。#boxing pic.twitter.com/odXHmaR0i9
(▲現役世界王者らも福田氏撮影の写真には一目を置いている)
謙虚に話す福田氏に世界王者のような風格すら感じた。
福田直樹 (ふくだ・なおき)
東京都出身。55歳。2001年に渡米しカメラマンに転向。ラスベガスで約400試合を撮影し続けた。BWAA(全米ボクシング記者協会)主催のフォトアワードにおいて、初エントリーから6年連続で入賞し、最優秀写真賞を4度獲得。2012年にはWBC(世界ボクシング評議会)のフォトグラファー・オブ・ザ・イヤーにも選出された。
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