スーパーフライ級の三冠(日本、東洋太平洋、アジア)王者の福永亮次。
ボクシングを始めたのは25歳からと、チャンピオンクラスでは異例と言える遅いスタートだ。
元々やんちゃで勝ち気な性格。中学卒業後15歳で大工となり、まじめに働いていたが家の近くにジムができたことで「強くなりたい思い」が沸き起こり、胸に火がついた。
「プロになるとも思っていなかったし、ここまで来れるとも思っていなかった」。着実に階段を上ってきた王者は今でも、二足の草鞋で大工の仕事を続ける。
「肩周りや背筋、手首の強さ、拳の硬さは仕事で身につけた。怪我もなく頑丈な体も仕事のおかげです」
筆者も現役時はサラリーマンとの二刀流だったが、時間が限られた中で効率を考え、練習への取り組みも変わった。
福永も、兼業の環境をプラスにとらえ、身体の強さにつなげているのだろう。
実際にパンチを受けてみた。
鋭い踏み込みからジャブ。ストレートは「似ている」と言われるパッキャオのように飛び込みながら打つのが特徴だ。
回し込むように打つ返しの右フックもストレートと同等の威力。後ろの蹴り足が強く、効率よく相手に力を伝えている。
重いものを効率的に運ぶ大工仕事が、強打に繋がる足腰の強さを生み出している。
打った後もバランスが崩れないのは、下半身がしっかりしている証拠だ。
現在3団体で世界ランクに入っており、世界王座まであと一歩のところまで来た。
「(ここ最近で)いきなりここ(世界挑戦圏内)まで来たので、まだイメージがおいついてないが、34歳なので時間がない」
ベテランの年齢となった福永にとって、チャンスは多く巡ってこない。初となる世界戦の舞台に立つためには内容が伴った試合をして、評価を高めることが求められる。
次戦は6月21日に同級8位の藤井貴博と対戦する。ここまで勝った試合は全てKO。記録が続くか注目したい。
福永亮次(ふくなが・りょうじ)
大阪府高槻市出身、34歳、 角海老宝石ボクシングジム所属、第43代日本スーパーフライ級王者、第38代OPBF東洋太平洋スーパーフライ級王者、WBOアジアパシフィックスーパーフライ級王者の現3冠王者。戦績は17戦13勝(13KO)4敗。
関連記事
「リトル・パッキャオ」福永亮次 KOを量産する武器とは
【木村悠「チャンピオンの視点」】