デビューから10連続KO勝利を含む13戦無敗。破竹の勢いを誇るミドル級・竹迫司登は、とにかく強い相手との練習が好きだという。
プロに進むと決めた時も、同じ重量級で強い選手がいるワールドスポーツジムを選んだ。今は1階級上のスーパーウェルター級世界ランカー・井上岳志と切磋琢磨している。
井上とマスボクシングする竹迫(オレンジのシャツ)
竹迫には忘れられない戦いがある。
関西ボクシングの名門である龍谷大で力をつけていった、大学3年時のことだ。
国体近畿大会の予選に当時ロンドン五輪で金メダルを獲得したばかりの村田諒太が出場。決勝で対戦が実現したのだ。
「当時は自分のレベルもわからないままでした。試合前に全く緊張はなくて、ただ最強の人と試合できるのを楽しみにしていました」
ゴングが鳴り、あとは無我夢中。気付いたらロープに詰まっていた。2R、レフリーストップでの敗戦だった。
「何をしていいかもわからなかった。でも止められても『まだ戦いたい』というワクワクした気持ちが強く残りました」
負けはしたが、その年には国体で準優勝し(村田は本戦出場せず)、そこから竹迫は全国区のボクサーへと変貌していった。
圧倒的強者との対戦で得るものは多い。世界レベルの技を体感し、何よりも戦ったという経験が自信に繋がる。竹迫もその経験から格上選手との練習機会を大切にしているという。
今身近にいる強者は前出の井上。既に世界戦を経験した男の背中を追いかけるように世界を目指している。
竹迫司登(たけさこ・かずと)
大阪府寝屋川市出身。29歳。第61代日本ミドル級チャンピオン。第53代OPBF東洋太平洋ミドル級チャンピオン。ワールドスポーツボクシングジム所属。高校までの戦績は1戦1敗だったが、希少な重量級で秘めたポテンシャルが関係者の目に留まり、龍谷大に推薦入学。KO率の高さから「和製・ゴロフキン」と呼ばれている。
【木村悠「チャンピオンの視点」】